北朝鮮報告(オマケ)~北朝鮮の町で見かけた飲食店の看板ギャラリー。

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 北朝鮮報告(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)から続きます。

 前回の記事まででひと通りの報告はおしまい。この記事ではオマケとして、北朝鮮の町で見かけた飲食店の看板をずらり並べてみたいと思います。主に移動中の車窓から撮影したものですが、予想以上にいろいろな種類の専門店があって驚きました。

「いつかこれらの店も食べ歩いてみたい!」

 そんな意味から記録の意味も含めて紹介します。

 まず、冒頭の写真は平壌で撮った商業ビルの写真。飲食店や商店などはこうした低層の建物に集まっているか、または住宅用高層ビルの低層部分を店にしているケースが多かったです。

 道路との間に立っているボックス状の簡易的な建物は、屋台料理やスナック、飲料などを販売する露店のようなもの。3つある露店の真ん中、その上にかかっている看板が……。

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 こちら。

「칠골 두부전문식당(七骨豆腐専門食堂)」

 と書かれており、その下には……。

・불고기(プルコギ=牛焼肉)
・각종료리(各種料理)

 と主要なメニューも書かれています。七骨(チルゴル)は平壌市内の地名を表し、その地域にある豆腐専門の食堂ということ。プルコギのほか、各種料理を用意しているということがわかります。

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 ひとつの建物に複数の飲食店が入っているケースも。

「대동문 불고기집(大同門プルコギチプ)」(3階)
「최승대식당(最勝台食堂)」(1~2階)

 あと、建物の右側中央あたりに赤青白の看板も見えますが……。

「대동문 리발관(大同門理髪館)」

 という理髪店も一緒に入っているようです。

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 看板の下にメニューを掲げているところもあり、これも興味深かったですね。

・숯불고기(炭火焼肉)
・꼬치구이 양고기(羊肉の串焼き)
・평양랭면(平壌冷麺)
・각종료리(各種料理)
・가스맥주(生ビール)

 なお、最後の生ビールは直訳すると「ガス麦酒」。この表記はけっこうあちこちで見ました。ビンビールのほうは「병맥주(瓶麦酒)」で南と同じです。

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 こちらの店でも大きく「食堂(식당)」と書かれた下に……。

・랭면(冷麺)
・가스맥주(生ビール)
・각종료리(各種料理)
・불고기(プルコギ)
・결혼식(結婚式)

 とあります。最後の結婚式というのは宴会料理を指すのでしょう。

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 各種料理を扱う店だけでなく、特定の料理を掲げた専門店も多かったです。

「서평양국수집(西平壌ククスチプ)」

 南でククス(국수)というと、カルグクス(韓国式うどん、칼국수)や、チャンチグクス(宴会用のにゅう麺、잔치국수)を想像しますが、北では冷麺を指すとのことでした。

 また、南でもよく言う……。

「いつククスを食べさせてくれるんだ?」

 との質問は、「ククス=結婚式に欠かせない料理」という公式から、いつ結婚するんだという意味になりますが、この表現は北でも同じとのこと。ただし、南ではチャンチグクスを食べるのに対し、北ではそのククスもやはり冷麺なのだそうです。

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「1식당(1食堂)」

 というシンプルな店名にひかれて思わず撮った写真。その後、「2식당(2食堂)」も見つけました。ただ、後々知ったのですが、むしろ意味があるのは左手にある緑色のマーク。

「금컵(金カップ)」

 というブランドにこそ注目すべきでした。

 なんでも、金カップは運動選手に向けた栄養価の高い食品を開発する工場のブランドで、パンや菓子などさまざまな食品を生産しています。そのメーカーの飲食店ということなので、これは特別な料理が期待できそうですね。

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「チャジャンミョンチプ」

 チャジャンミョン(ジャージャー麺、짜장면)の専門店もありました。けっこうあちこちで見かけたので、北でもチャジャンミョンは人気料理として定着しているようです。

 出前とかも対応しているんでしょうかね。チャンポン(激辛の海鮮麺、짬뽕)、カンチャジャン(とろみなしのジャージャー麺、간짜장)、タンスユク(酢豚、탕수육)といった南での定番料理もメニューにあるのか気になります。

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「팔골 염소불고기식당(八骨ヨムソプルコギ食堂)」

 八骨地区にあるヨムソプルコギ(ヤギ焼肉)の専門店。北朝鮮報告(7)でも書きましたが、ヤギ肉は90年代から盛んに飼育、消費されるようになったそうです。南では釜山の金井山名物として有名ですが、あちらは黒ヤギ、北では白ヤギを多く見ました。

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「네거리식당(交差点食堂)」

 ちょっとわかりにくいですが入口脇に……。

・솔잎차집(松葉茶店)

 という看板もタテにかかっています。ソルリプチャ(松葉茶、솔잎차)を提供する店だと思いますが、ほかにもいろいろな伝統茶が飲めそうですね。

 そしてもうひとつ気になるのが、

「평양고서점(平壌古書店)」

 という看板もすぐ上に見えること。どんな古本があるのか見てみたいですね。料理関係の古い本とかあさってみたいです。

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・トックッ(雑煮、떡국)

 の看板は、北朝鮮報告(7)で紹介したアヒル肉の店にかかっていました。入るときに撮影し、看板を掲げるぐらいならトックッも食べてみたいと思いつつすっかり忘れていました。

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 北朝鮮報告(4)で紹介した咸興冷麺の専門店「新興館」は平壌にも支店があります。咸興まで行くのは1日がかりなので、平壌でも食べられるのはありがたいですね。いつか機会があれば「玉流館」からのハシゴとかもしてみたい。

 中国の丹東にも海外支店が出ているそうです。

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 ここからは地方で撮影したもの。

「고원 강냉이음식 전문식당(高原トウモロコシ料理専門食堂)」

 咸鏡南道の高原(コウォン)という地域で撮りました。南ではオクスス(옥수수)と呼ぶことが多いトウモロコシですが、北ではカンネンイ(강냉이)が主流です。北朝鮮報告(4)で紹介したジャガイモ料理のフルコースがトウモロコシ版になった感じでしょうか。

 今回の紹介にはありませんでしたが、前泊した瀋陽では北朝鮮経営のレストランでカンネンイグクス(トウモロコシ温麺、강냉이국수)を食べました。

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 せっかくなので少し紹介するとこんな感じ。

 カンネンイグクスとしては多少アレンジを加えた印象ですが、味噌仕立てのスープにトウモロコシ麺が入っています。具は白菜漬け、茹で豚、ゆで卵、錦糸卵といった面々。白菜漬けはピリッと辛く、発酵味があり、刻んだ状態でたくさん入っています。麺が多いので単調になりがちなところを、これがいいアクセントになっていました。

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 余談ついでにもう少し脱線すると、カンネンイグクスと一緒に食べたお餅がとても美味しく印象に残っています。

・シィウムトク(蒸し餅、쉬움떡)

 と呼ばれるそうですが、調べたところ南でいうチュンピョン(증편)だそうですね。マッコリで発酵させた蒸し餅のこと。北で買ってきた料理本によれば、咸鏡道地方の郷土料理でもあり、宴会膳に欠かせない伝統餅との側面もあるそうです。

 これが思った以上にふんわり軽く、口の中であっという間になくなる感じ。一瞬強めの甘味を感じますが、それもすぐに消えてなくなります。引き際のよい粋な一品。平壌の「玉流館」でもメニューにもあったので、咸鏡道以外でもメジャーな餅なのかもしれません。

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 また看板に戻りまして咸興で撮影した1枚。

「동문 감자전문식당(東門ジャガイモ専門食堂)」

 北朝鮮報告(4)で紹介した「新興館」の向かいにありました。おそらく同じような料理が出てくるのだと思いますが、専門食堂であるならもっと種類が豊富なのかもしれません。

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「송천 단고기집(松川タンゴギチプ)」

 咸鏡南道高原郡にある松川地区で撮影。タンゴギ(甘い肉)は犬肉を指すので、犬肉料理の専門店です。タンゴギの店もけっこうあちこちで見かけました。

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「금야국수집(金野ククスチプ)」

 咸鏡南道金野郡にあった冷麺店。冷麺店も各地にありましたので、丁寧に見ていくと平壌冷麺、咸興冷麺以外の地方色が見えてくるかもしれませんね。

 余談ですが、この両者に南の晋州(チンジュ)冷麺を加え、朝鮮三大冷麺と称することもあります。僕は2008年に晋州まで行って食べたので、これにて朝鮮三大冷麺制覇。また、全州ビビンバ、晋州ビビンバに、北朝鮮の海州ビビンバを加えて朝鮮三大ビビンバとも呼ぶので、これもいつか制覇したいですね。

 究極はすべてを総合した朝鮮三大料理ですが、これは平壌冷麺、開城湯飯(開城式のスープごはん、개성탕반)、全州ビビンバというラインナップ。

 ただ、今回開城まで行ったものの開城湯飯が有名だという話は聞けませんでした。どころか開城湯飯という料理名も通じず、クッパプ(スープごはん)が有名だという話もピンと来ない様子。これを制覇するのがいちばん難しいのかもしれません。

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「금야고기국집(金野コギクッチプ)」

 同じく咸鏡南道金野郡で撮影。コギクッは肉のスープを指すのですが、看板には特に何肉とは書かれていません。南だったらまず牛肉を想像するところですけどね。

 そのほか目についた看板として……。

・간이식당(簡易食堂)
・지짐집(チヂミ店)
・물고기회집(刺身店)
・토장국집(味噌チゲ店)
・온반집(スープごはん店) ※온반(温飯)は南でいうクッパプ(スープごはん、국밥)
・토끼료리전문점(ウサギ料理専門店)
・추어탕집(ドジョウ汁店)
・잉어탕집(コイのスープ店)
・술집(居酒屋)
・막걸리집(マッコリ居酒屋)

 といったものがありました。

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 また、冒頭で紹介した露店もさまざまな看板を掲げており……。

・청량음료(清涼飲料)
・강서약수(江西薬水) ※有名な炭酸泉
・군밤(焼き栗)
・군고구마(焼き芋)
・솜사탕(わたあめ)
・빙수(カキ氷)

 主としてこんなものをよく見ました。

 ずらり並べてみると、北朝鮮にもずいぶんいろいろな料理、飲食店があるようです。現状、外国人が行くにはハードルの高いところも多いと思いますが、いつの日か自由に旅行できる日が来たら、全力で食べ尽くしに行きたいと思います。

 以上、オマケも含めてこれで本当におしまい。

 帰国してこの1週間、ほとんどまるで仕事にならなかったので、ホッと安堵しながら日常に戻りたいと思います。

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