先日、視察ツアーに行ってきました江華島(カンファド)。
なにかひとつ象徴的な写真をというと、やっぱりこの支石墓になるのではないかと思います。ユネスコの世界文化遺産に登録される「高敞、和順、江華の支石墓群跡」の中のひとつ。必ずしもこれだけが世界遺産という訳ではないのですが、いちばん絵になる形であるため、たいていはこの写真が紹介されています。試しに「江華島 世界遺産」で画像検索をしてみればこの通り。
江華島の面白いところって、こうした古代から始まって、近現代に至るまで、ずーっと歴史の要所要所で顔を出してくるところだと思うのです。
先日、仁川市の方と飲む機会があったのですが……。
「仁川は今でこそ空港のある町として国の玄関口であり、19世紀後半にも門戸を開放する象徴的な役割を果たしましたが、それは決してその時代だけの話ではないのです。江華島の支石墓が示すように、はるか古代から人が集まってくる役割を担った町なのです。そこを観光客のみなさんにわかって欲しい!」
と熱く語っておられました。
だからこそ、僕が問いかけた「仁川でいちばんオススメの場所は?」との問いに、
「江華島!」
と即答で返ってきたんでしょうね。
仁川というとチャイナタウンとか、近現代の歴史スポットなどがクローズアップされがちですが、その土地柄というか、土地の持つ運命的な役割を理解するのであれば、まず江華島からというのは納得できる話でした。
タイトルにある軽く6日はかかるというのは、本日アップした韓食ペディアの「江華郡の料理」に費やした時間ですが、その冒頭に地域概要としてこんなことを書きました。
ユネスコの世界文化遺産にも指定された青銅器時代の支石墓群(高敞、和順、江華の支石墓群跡)や、神話上の始祖である檀君が天に祭祀を行った摩尼山(마니산)、高句麗時代の381年に創建されたとされる伝燈寺(전등사)、高麗時代の13世紀に臨時首都として使用された宮殿跡の高麗宮址(고려궁지)、朝鮮時代の19世紀後半に諸外国と対峙した防衛拠点の草芝鎮(초지진)など、各時代における歴史がこの地域に凝縮している。
歴史の専門家であればもっとうまく語るでしょうが、ざっと列挙するだけでも、これだけの長期にわたって歴史的な風景を見られる地域というのはそうありません。江華島は面白いのですよ。本当にありとあらゆる視点から。
僕がこだわるのは食の部分ですが、この部分についても今回の視察ツアーでガイドさんからいい話が聞けました。島嶼地域ですから漁業、養殖業が盛んなのは当然として……。
江華郡は漢江、臨津江、礼成江という3つの河川が流れ込む河口地域に位置するため、堆積地として肥沃な土壌を有することから、漁業のみならず農業も盛んに行われている。
という説明は、これまでの食体験からも腑に落ちるものでした。
僕なんかついつい、
「旬のワタリガニがうまい!」
といった話に終始しがちですけどね。食を語るうえでは、そういった背景を語ることこそ重要。そんな当たり前のことを改めて痛感してきた視察ツアーになりました。
そういった土地のパワーを理解できれば、大地の栄養分を吸い尽くして育つ高麗人参の産地ということも理解できますし……。
朝鮮戦争が起こると高麗人参の本拠地である開城の人たちがここに避難し、1953年から本格的に栽培が行われた。
と、やっぱり歴史と密接に絡み合う土地柄も併せて記憶にも残ります。
ソウル・京畿道地域でもっとも古い醸造場(1924年創業)があったり……。
仁川市で2番目に古い飲食店(1953年)があるなど、食の面からも歴史を楽しめるのが面白い町。当面、5月のグルメツアーにお誘いするという意味合いもありますが、そうでなくともぜひ大勢の人に訪れて欲しい島です。
6日かけて書いた「江華郡の料理」という記事もぜひ読んでみてください。
エピソードの欄にも書いたように僕はこの島で1度死にかけましたが、奇跡的に助かっていまがあります。霊的なものは一切信じないタチですが、もしかすると江華島には韓食の神様がいたのかもしれません。