手渡されたメニューには、「人気ブロガー様 ご招待ディナー」という文字。
日々、いろいろな店に出没しますが、ここまで丁重なおもてなしをしていただくことは稀ですね。ありがたく思うとともに、恐縮してしまうほどの先制パンチでしたが、いま振り返るにここで驚いていてはまだまだ。メニューにも見える「創作韓国料理とワイン」の組み合わせは、事前に予想していたよりもはるかに本格的で、終始メロメロになった一夜でした。
この日の会は、お店の方からご招待を受けて実現。
もともとは超人気ブログ「アラフォー韓国マニアの果てなき野望!」のhimeさん経由でお話をいただきました。
いただいたメールには、
「今後、創作韓国料理とワインのマリージュ文化が少しでも広がるようにアドバイスや、ご試食をして頂きたいと思い企画を致しました」
とあり、ご試食はともかく「アドバイス」の部分に責任を持てるよう、慌てて身の回りのグルメな方々にお声かけ。
お店にとって役立つアドバイスができたかどうかはまた別の話ですが、それぞれ韓国関係の仕事をしている面々が、大喜びで楽しんだというのがひとつの答えになるかなと思います。日本であれ、韓国であれ、韓国料理とワインの組み合わせをコンセプトに掲げた店は山ほどありますが、それらとは一線を画す本気を感じてきました。
写真にある乾杯は……。
・クレマン・ド・ブルゴーニュ・ロゼ(シャルル・バイィ)
もともとシャンパーニュの区画にあり、シャンパーニュ方式で生産されているスパークリング……といった蘊蓄は当然のごとく受け売りですね。お店の方から教えていただいた話に加え、ご同行いただいたグルメな皆様の反応を交えつつ話を進めたいと思います。
アミューズとして出されたのは、生ハムで巻いたクリームチーズ。ヘーゼルナッツでアクセントを加え、コチュジャンのソースを加えてあります。
といいつつ、コチュジャンの辛さや風味はほとんど感じないぐらいにごく少量。
イタリアン出身のシェフが作る創作韓国料理が店のウリですが、それに優先させて「ワインに合う」という部分を大前提としています。料理ありきのワインではなく、ワインありきの料理となっているので、韓国要素の取り入れ方に工夫が見られますね。
・カボチャの冷製粥。
滑らかなスープに米粉を加えてあります。こうしたコースにおいて、まずお粥から始めるというのは韓国料理の定石。そのあたりも意識されているようです。
・尾長鯛のカルパッチョ 青ネギと胡麻の香り
皿の右下に点々とたらされているのがチョジャン(唐辛子酢味噌、초장)のソース。コチュジャンに酸味を加えたものですが、なめてみるとほぼ酸味、辛味は感じさせず、派手な刺激にはならないよう配慮されていました。
・トゥレーヌ・ソーヴィニョン・ブラン(ラドゥセット)
「この造り手さんは畑に一切の雑草を許さないんですよ」とソムリエさんが熱く語っていたのが印象的。このワインに限らず、情熱たっぷりの説明が嬉しかったです。
ちなみにこちらのお店、マッコリや焼酎は置いておらず、ワインだけで130種類。グラスワインも15種類を揃えているそうです。この日も料理ごとに合うワインをおすすめで出していただきました。
・尾長鯛のユッケ
カルパッチョとユッケで尾長鯛が重なっていますが、連続した訳ではなく、2種類のコースをシェアしながら食べたため。この後も同時進行で紹介していきます。
色合いからわかると思いますが、ユッケの味付けはコチュジャンがベース。辛さはしっかりしていましたが、甘味もあって上品な仕上がりです。
・ケジャンのカッペリーニ
メニューを見た瞬間から食べたいモード一直線でした。ケジャン(カニの薬味ダレ漬け)を載せた極細のパスタ。カンジャンケジャン(カニの薬味醤油漬け)で来るかなとも思いましたが、ヤンニョム(薬味ダレ)のほうでしたね。レモンを絞ってみると、もう一段階化けます。
もうひとつのコースは……。
・ウニとほうれん草のキッシュ
料理名だけ見ると韓国要素は感じられませんが、蜂蜜で甘味をつけたチョジャンのソースが添えられています。ウニもたっぷりでしたねぇ。贅沢な一品。
ワインはそれぞれの料理に合わせて……。
・ドメーヌ・ド・フォンドレシュ
・セリカ・ヴィオニエ(ヴェディラム)
ただ、このへんからワインもシェアし始め、それが味見として両方いただくようになり、手元がグラスだらけになりました。
レモンのソルベを挟んでメインは……。
・カルビチムのパイ包み焼き
写真ではほぼ見えていませんが、中に柔らかく煮込まれたカルビチム(牛肉の蒸し煮、갈비찜)が入っています。牛肉もさることながら、脇を固める大根やサツマイモがまた美味しかったですねぇ。
そして、もうひとつのコースは……。
・薬飯を詰めた鳥モモ肉のロースト
個人的にいちばん刺激を受けた料理がこれでした。丸鶏に米を詰める料理はサムゲタン(ひな鶏のスープ、삼계탕)をはじめいろいろありますが、いったんヤッパプ(薬飯、ゴマ油や黒砂糖を加えたおこわ、약밥)を作ってから、それを詰めるという手法は初めて見ました。甘こってりとした味わいが鶏肉とよく合います。
メインに移ってからは赤ワインに変わり……。
・テッラ・ルージュ(ドメーヌ・ド・ガベラス)
・バンドール(シャトー・ド・ピバルノン)
をそれぞれの料理に。でしたが、圧倒的に写真の「バンドール」が座の支持を受け、星の見た目からなぜか「チェ・ゲバラ」の愛称を得てガブ飲み状態に。「アドバイス」を求められてやってきたお客様が、ただの酔っ払いと化していったのはこのあたりからでしょう。
いえ、たぶんその飲みっぷりを気に入っていただいたからこそ、予定にないワインもいっぱい出していただいたのかなぁと(そう信じたい)。
・キムラセラーズ・ピノ・ノワール
ご厚意をいいことに、みんなで本当によく飲みましたね。
最後はランチでも大人気だという……。
・トマトと胡麻のヘルシー冷麺
麺にゴマペーストと隠し味のヨーグルトが絡み、そこへクラッシュトマトと鶏肉が加わるという豪華なスタイルでした。
この冷麺、8月31日までの限定で、冷製のお粥とデザート、ハーブティーまでついて1000円(ランチ)とか。お近くにお勤め、お住まいの方は、まずはランチから足を運んでみるというのもアリかと思います。
もうひとつのコースは鶏ダシ100%の……。
・特製冷麺
コラーゲンが染み出てとろりとしたスープは限りなくクリアでうま味充分。具には卵、梨とともにチャンジョリム(牛肉の醤油煮、장조림)が添えられていました。
デザートは……。
・洋ナシのパイとバニラアイス
バルサミコを煮詰めたソースがかけられています。これにハーブティー(橘皮減茶)が添えられて本日の特別コースは大団円……のはずが、この後グラッパまで出ていましたね(しかも2種類)。そりゃ、最後はみんなベロベロになる訳です。記憶の飛んだ方あり、店にカバンを忘れて慌てて戻った方あり。おかげさまで本当に楽しい夜でした。
値段的にちょいと張るのは仕方ないところですが、ワイン好きの方はもちろん、ちょっと高級な雰囲気で韓国料理を楽しみたい方、イタリアンのシェフが作る斬新なアレンジの韓国料理を食べてみたい方にはおすすめです。5000円、7500円、1万円のコースが中心ですが、アラカルトも用意されています。
前述の通り、ランチはリーズナブルなので、そちらからでもぜひ。
あと最後になりましたが、オーナーさんというのがモデルのソンミさんなので、ミーハー気分で足を運ぶというのもアリだと思います。
店名:Nouvelle Korean Wine Dining KAYA
住所:東京都港区赤坂3-12-2赤坂慶和ビル2階
電話:03-6441-2124
http://www.kayawine.jp/
https://www.facebook.com/koreandining.kaya