昔からお店の名前とかにはまったく無頓着な人たちで、移転のたびに、コロコロ店名を変えていたりします。いや、それなりにこだわりはあるようなんですけどね。つい昨日も仕事帰りに立ち寄ったら、
「店の名前、これにしようかと思うんだけど」
とあれこれ相談されました。
ただ、そういう話は普通オープン前にするものだと思うのですが、この時点でもうオープンしてから半月以上も経ちます。それをいまだに悩んでいるのは、たぶんこだわり……と言ってよい……はず。現状、居抜きで入った前の店名を残しているので、いま行く人は、
「焼肉・韓国料理DONまつり」
という赤い看板を目印にしてみてください。
というか、このご夫婦に見覚えのある方が、まず行くということでいいんですけどね。新大久保、浅草、上野などで店をなさっていたので、きっと各地に常連客がいるはず。閉店と思って呆然としていた方は市ヶ谷を目指してください。以前、知り合い店を手伝うということで、数ヵ月働いていた店と同じところです。
さて、オープンの知らせを受け(厳密には携帯の記録が間違っていたようで連絡が来ず、人づてに知り)、たまたまタイミングが合った妹夫婦らと家族でぞろぞろと足を運んできました。
まずは、テジカルビ(豚カルビ、돼지갈비)をつつきながら……。
定番のヘムルパジョン(海鮮チヂミ、해물파전)など。
子どもがいるため、辛くないメニューを中心に組み立てたのですが、この日、焼肉よりも人気を集めたのが、カムジャジョン(ジャガイモチヂミ、감자전)でした。
甥っ子が夢中になって食べていたので、お母さんにレシピを尋ねてみると、
「ジャガイモ100%!」
とシンプルな答えが。作る人によっては小麦粉を足したりもしますけどね。すりおろして焼くだけで、これだけ美味しいのはジャガイモの手柄というべきか、そのシンプルさにも技術が隠されているのか。
大人は昼からビールを飲みつつ、タットンチプ(砂肝炒め、닭똥집)を肴に。コリコリとした砂肝の食感と、ホクホクとしたニンニクの対比、そしてビリッと刺激を効かせる青唐辛子の存在感がたまりません。
サイドメニューであとひとつなにか、と思ったときに、ぜひオススメしたい料理です。
まあ、個人的には副菜のナムルあたりも染みるんですけどね。これだけ韓国料理店が増えたいまでも、なかなか探しにくいのが料理上手なお母さんのいる店。韓国家庭料理の「家庭」に重きを置きたい人は、ぜひ足を運んでみてください。
なお、この日は食べませんでしたが、店いちばんの自慢料理はタットリタン(鶏肉と野菜の辛い鍋、닭도리탕)。厨房で作っているところを見ていても本当に特別なことはしていないのですが、なぜここまでにと驚くほどに絶品です。
お母さんいわく、大事なのは冷凍の鶏を使わず、国産の丸鶏を注文ごとにぶつ切りすることとか。醤油、コチュジャン、粉唐辛子などでピリ辛に味付けをして、じっくり煮込めばできあがりです。
どろっと濃厚な仕上がりにカレーを連想する方もときおりいらっしゃいますが、もちろんカレー粉は入っていません。コクを出しているのはエゴマの粉。鍋料理に入れると本当にいい仕事をします。
人数が多ければ、タッペクスク(丸鶏の水炊き、닭백숙)もぜひ。鶏肉は塩につけて食べ、スープにはごはんを入れてお粥として食べます。
こんな感じでお父さんがさばいてくれるのも見どころ。
料理上手なお母さんもさることながら、にこやかなお父さんの過剰なまでに至れり尽くせりな接客も、ファンが多い理由のひとつです。
もっと大勢なら、ヤンニョムチキン(フライドチキン甘辛ソース、양념치킨)もいいですね。フライドチキンとのパンバン(ハーフ&ハーフ)で注文すると両方の味で楽しめます。
ほかにもいろいろなメニューのある店ですが、とりあえずは鶏、鶏、鶏がイチオシの「序」。矛盾した表現ですが、イチオシなどいくらでも出てくるお店なので、真髄を知りたい方は通い詰めてください。ふた昔ぐらい前の新大久保にありがちだった、ゆるーい空気感が好きな方にはことさらおすすめ。店名とか看板なんて二の次でいいんです。
店名:検討中(現状は「焼肉・韓国料理DONまつり」)
住所:東京都新宿区市谷田町2-32第2市谷マンション地下1階
電話:03-6265-3377
※12月23日追記
無事、店名は「市ヶ谷オンマ家」に決まりました。