・三国時代に交通の要衝として新羅と高句麗が争った
・朝鮮時代に優秀な儒学者を養成していた
・小白山脈を背にして農業、畜産業が盛ん
・リンゴ、高麗人参、韓牛といった名産品がある
ゴールデンウィークに3泊した栄州は美味しい町でした。
その魅力を伝えるべく、三部作で語っております。
栄州物語(1)では地域の特徴を上記のようにまとめました。
続く、栄州物語(2)では地域の豊かさに着目し、
名産品の数々をさらに掘り下げて料理を紹介。
栄州物語(3)では、全体のまとめを意識しつつ、
さらなる料理を紹介したいと思います。
まず、冒頭の写真は……。
・インサムチンマンドゥ(高麗人参入り蒸し餃子、인삼찐만두)
・インサムマンドゥクッ(高麗人参入り餃子スープ、인삼만두국)
という2品。
写真手前がスープで、左奥が蒸し餃子です。
ほかにも栄州では、
・インサムカルビタン(高麗人参入りカルビスープ、인삼갈비탕)
・インサムソルロンタン(高麗人参入り牛スープ、인삼설렁탕)
・インサムユッケジャン(高麗人参入り牛肉の辛口スープ、인삼육개장)
といった料理を見ました。
高麗人参関連料理だけでもずらりとあります。
餃子の具として刻んだ高麗人参が入っており、
食べるとふわっと土の香りが抜けていきます。
ガツンとくるかと思いきや、あくまでもふんわり。
聞いたところ、入れすぎると苦味が出て食べにくいし、
少なすぎると、香りのインパクトが物足りない。
そのあたりの加減がいちばん難しいそうです。
しかもこれ、餃子としてのできもよかったんですよね。
豚肉が粗びきで食感もよく肉汁もジューシー。
皮も手作りで、紅参エキスが練り込まれています。
(紅参=ホンサム、燻蒸した高麗人参)
店名:梁大監(ヤンデガム)
住所:慶尚北道栄州市豊基邑人参路11-1(西部里141-3)
電話:054-633-6335
栄州のスイーツからもうひとつ。
・センガンドノチュ(生姜ドーナツ、생강도너츠)
本来、ドーナツのスペルは「도넛(ドノッ)」ですが、
お店の表記に揃えて「도너츠(ドノチュ)」としました。
栄州物語(1)でもエピソードとして書きましたが、
僕が栄州と聞いて、まず思い出したのがこれです。
表面がカリッとして、中は餅のようなねっとり食感。
少量のアンコと、表面に絡めた蜜の甘さに加えて、
生姜の香りと辛さが全体にパンチを効かせています。
そして、砕いたピーナッツとゴマの香ばしさ。
揚げたてをアツアツで食べると抜群に美味しいです。
こちらが本社のある旗艦店で……。
店名:情ドーナツ本社
住所:慶尚北道栄州市豊基邑小白路2000(山法里342)
電話:054-636-0067
こちらが大元の本店。
店名:情ドーナツ本店
住所:慶尚北道栄州市豊基邑東洋大路6-1(東部里418-16)
電話:054-636-0067
とはいえ全国に支店もあって栄州以外でも食べられます。
僕が実際に食べて写真を撮ったのも安東駅前の支店でした。
さて、いよいよ大トリですが……。
・テピョンチョ(そば寒天入りキムチチゲ、태평초)
という耳慣れない料理が栄州にはありました。
なんでも地元の方々曰く……。
「むかーし、実家でよく食べた料理だね」
「おふくろの味といより、おばあちゃんの味って感じ」
「そういえば最近は食べてないなぁ……」
といったイメージ。
そばのでんぷんを固めたメミルムク(메밀묵)は、
栄州に限らず、地方ではよく出合う素材のひとつです。
それをキムチチゲに入れるというのは初めて見ましたが、
栄州、およびその周辺地域では昔から食べているとか。
極めてローカルな郷土料理といえましょう。
中をまさぐるとこんな感じ。
自家製のメミルムクは滑らかな食感で素朴な味わい。
そこまで、そばが香るということでもないので、
おそらくもともとは、かさ増しだったんでしょうね。
ただ、お店の人から話を聞いて驚きました。
「もとは宮中料理のタンピョンチェ(蕩平菜)です」
「それを庶民的に解釈したものがテピョンチョ(太平草)」
「私が子どもの頃はお客さんをもてなすご馳走でしたよ」
・タンピョンチェ(宮中式の和え物/탕평채)
といえば、チョンポムク(緑豆寒天、청포묵)を、
数々のナムルや牛肉などと和えて作る代表的な宮中料理。
言われてみれば、名前も微妙に似ておりますが、
そんなところにつながるとは夢にも思いませんでした。
参考資料/タンピョンチェ(画像検索)
http://bit.ly/1ilM8XE
そこで話は最初のまとめに戻る訳です。
朝鮮時代に私塾が置かれ、人材を輩出したということは、
その当時から中央の文化に近い地域だったということ。
栄州を出て官僚になる人がいれば、栄州に戻ってくる人もいます。
そういう人たちは中央の文化を持ち帰ってくるんですね。
そんな経緯からタンピョンチェが栄州に持ち込まれ、
庶民的にアレンジされて家庭料理として普及。
それが現代まで伝わっているということは……。
「これぞまさに栄州を象徴する料理ではないか!」
とその瞬間、僕はおおいに興奮したのです。
こちらは一緒に出していただいた……。
・スンドゥブ(押し固める前の豆腐、순두부)
左上にある薬味醤油をかけて食べるのですが、
それなしでも、豆の甘味がよく出ていて美味でした。
たいへん素朴で、心がほっと落ち着く味。
テピョンチョに使うメミルムクもスンドゥブも、
早朝から店の人が手作りしているそうです。
せっかくなので作業場も見学させていただきました。
宮中料理に由来となると、話題としては派手ですが、
実際にはそれよりも手作りの温かさを強調したいですね。
朝6時からの営業で、朝食として来る人も多いとか。
栄州の朝ごはんにテピョンチョとスンドゥブ。
ずいぶん贅沢な1日の始まりになると思います。
店名:伝統ムッチプ食堂
住所:慶尚北道栄州市元塘路163番キル24(下望洞316-33)
電話:054-632-9284
ガイドブックなどを見るとほかに有名店はありますが、
地元の方曰く、本当の元祖はこっち! だそうです。
さて、三部作の記事はこれでおしまい。
最後は私信を兼ねてマッコリの写真を載せました。
栄州のマッコリは「栄州小白酒」と言います。
これを木浦(モッポ)から取り寄せた、
・ホンオフェ(ガンギエイの刺身、홍어회)
と一緒にいただきました。
今回の栄州取材は、栄州をこよなく愛する方々のおかげ。
僕に声をかけ、栄州まで連れて行ってくれた皆様と、
そして栄州で迎えてくれた皆様に深く感謝をしております。
よく食べ、よく飲み、よく遊んだ3泊4日。
仲間に入れていただいて、とても嬉しかったです。
その恩義に応えるためにも、微力ではありますが、
今後も栄州の魅力を発信していくつもりです。
今回の三部作はそれに向けた最初の1歩。
理解を深めつつ、また栄州にも足を運びたいですね。
きっとまだまだ美味しいものがあるはずですから。
最後まで読んでいただいた皆様もありがとうございます。
ぜひ機会があれば栄州に足を運んでみてください。
美味しいものが山ほどあるとてもいいところです。
<栄州物語三部作>
栄州物語(1)~栄州と聞いて思い浮かべるものは?
栄州物語(2)~衝撃の大粒チョングッチャンに出合った日
栄州物語(3)~郷土料理の源流には宮中料理があった