今回の韓国出張は目的が大きくふたつ。
・夏に出版する地方グルメ本の追加取材
・秋に行うグルメツアーの下調べ
それがために忙しくも美味しい連休となりました。
収穫も多かったのでさらっとダイジェストで報告します。
上記のお仕事に向けた軽いお知らせも兼ねながら。
冒頭の写真は忠清北道堤川(チェチョン)市の名物で……。
・ヤクチョバプ(薬草ごはん、약초밥)
堤川は朝鮮時代から薬草(漢方材)の栽培が盛んな土地柄で、
ソウル、大邱と並び、3大薬令市(韓方市場)に数えられたとか。
(大田、全州、原州などもそう名乗っておりますが……)
そんな背景から市内には薬草料理の専門店が多数あります。
ヤクチョバプは各種の薬草を煮詰めた水で炊いたごはん。
そこに多数の副菜を用意して定食風に提供しています。
店名:テボミョンガ
住所:忠清北道堤川市新月洞201
電話:043-643-3050
堤川の隣町に移動して忠清北道丹陽(タニャン)郡。
漢江の上流域にある山里ではニンニクの生産が盛んです。
僕が初めて丹陽を訪れたのは2003年1月のことで、
それ以来、実に11年ぶりの訪問ということになりました。
お目当はマヌルソッパプ(ニンニク釜飯)。
かつて、ニンニクごろごろを期待して撃沈した話は、
メルマガ、コリアうめーや!!第53号に書きました。
第53号/激臭の予感、恐怖のニンニク釜飯見参!!
https://www.kansyoku-life.com/2000/02/1913.html
2003年当時、2かけだったニンニクが、
11年の時を経て、なんと3かけに増えていたのに驚き。
ひとりほくそ笑んだのは言うまでもありません。
なお、釜飯には3かけですが、実際は定食形式であり、
もっと大量のニンニク料理が副菜として登場しています。
ニンニクごろごろでなく、ニンニクずらずらですね。
店名:チャンダリ食堂
住所:忠清北道丹陽郡丹陽邑別谷里28-1
電話:043-423-3960
丹陽から小白山脈を越えると慶尚北道栄州(ヨンジュ)市。
今回、縁がありまして栄州だけで3泊してきました。
地元の方のサポートもあって、ずいぶん深い取材ができたので、
このブログでも、別途詳しい報告をするつもりです。
なにしろ栄州は市の観光担当さんが、
「名物が多すぎて逆に焦点を絞りにくいのが悩み」
と語るほど美味しいものの多い土地柄。
栄州韓牛、栄州リンゴ、豊基(プンギ)の高麗人参をはじめ、
農産物、畜産物がたいへん充実した地域です。
写真は地元のブランド大豆「浮石太(プソクテ)」を使った、
自家製のチョングッチャン(韓国式の納豆汁、청국장)。
豆自体が大粒で、これは美味しかったですねぇ……。
今回の取材で栄州にドハマリしてきましたので、
当面はひたすら栄州の魅力を語ろうと思っています。
めっちゃ地味ですが、めっちゃいいとこです。
店名:ハンギョルチョングッチャン
住所:慶尚北道栄州市豊基邑西部里138-10
電話:054-636-3224
栄州の南に接するのが、慶尚北道安東(アンドン)市。
年末に大邱(テグ)から道庁が移転してくるそうで、
役所の方々が、いろいろ大騒ぎになっているようでした。
ちょうど慶尚道が開道して700年という節目の年でもあり、
PRにも力を入れる1年ということみたいですね。
僕自身は丹陽と同じく11年ぶりの安東訪問。
目指した料理は……。
・ホッチェサバプ(祭祀風定食、헛제사밥)
でした。
料理の詳細は11年前のメルマガをご参照ください。
ふざけたフィクションですが、それなりに伝わるはずです。
第48号/安東むかしむかし物語その1
https://www.kansyoku-life.com/2000/02/1903.html
店名:カチクモンチプ
住所:慶尚北道安東市象牙洞513-1
電話:054-821-1056
そのまま安東に宿泊し、翌朝食べたのがこちら。
モーテルのおばちゃんに、
「そこでクッパプが食べられるからね!」
と教えてもらったお店が、創業60年を越える老舗でした。
店舗を構える前に市場で販売していた頃から数えると、
まあ、100年は越えるんじゃないかな、という店らしいです。
スープの中にはよく煮込まれたサイコロ状の牛肉に、
とろとろになった長ネギ、大根と至ってシンプル。
こういうのがいいんですよねぇ、むさぼり食べました。
店名:シゴルジャントクッパプ
住所:慶尚北道安東市南部洞148-6
電話:054-859-9898
安東から南下し、海沿いまで出て機張(キジャン)へ。
ずっと山の料理ばかりを食べていたので、
目一杯、海の香りを感じられる料理を選びました。
・アンジャングバプ(ウニ丼、앙장구밥)
ムラサキウニとバフンウニの両方を載せたウニ丼。
アンジャングというのがバフンウニの慶尚道方言ですが、
聞いたところ、ムラサキウニも使うそうですね。
お店の方曰く、
「ムラサキウニだけだとちょっとしつこい」
「バフンウニだけだと若干の苦みが出る」
「両方を合わせてこそ美味しいのよ!」
ということみたいです。
また、旬を見ても、
・ムラサキウニ(5~8月)
・バフンウニ(11~2月)
と夏冬をカバーできる利点があるのでしょう。
なお、日本のウニ丼とは味付けの面で少し異なり、
ごはんの底にゴマ油を混ぜたタレが忍ばせてあります。
もったいなくても、全体を混ぜてたべるのが作法。
ええ、そりゃもう絶品でした。
店名:ミチョン食堂
住所:釜山市機張郡日光面三聖里28-1
電話:051-721-7050
同じく機張の大辺港(テビョンハン)へ。
3~6月の機張はカタクチイワシが最盛期を迎えます。
港にはテント屋台がずらりと並び、生のイワシを販売。
刺身としても食べますが、塩辛用としても需要が高いようです。
箱買いするとその場で粗塩を振って塩辛にしてくれます。
そんな漁港の風景をひとしきり眺めた後は、
これまたずらりと並ぶ刺身専門店のひとつに入ります。
・ミョルチフェ(カタクチイワシの刺身和え、멸치회)
・ミョルチグイ(カタクチイワシの焼き魚、멸치구이)
のふたつを、ワガママ言って半人前ずつです。
半人前といえども、焼き魚だけで30尾ほどはありました。
たぶん両方で50尾ぐらいは食べたように思います。
どちらも美味しかったですが、
「生姜醤油でも食べたい……」
と思ってしまうのは日本人。
いずれまた行くときは持参したいと思います。
店名:南港フェッチプ
住所:釜山市機張郡機張邑機張海岸路572
電話:051-721-2302
機張から釜山へ移動し、そこで1泊しようと思ったら、
翌日のKTXが満席だったので急遽、大田(テジョン)まで移動。
韓国も大型連休中だったので交通手段の確保が大変でした。
写真はTwitterでもつぶやいた大田名物のパン。
1953年創業の「聖心堂(ソンシムダン)」が誇る……。
・プチュパン(ニラパン、부추빵)
・ティギムソボロ(揚げそぼろパン、튀김소보로)
というふたつの看板商品です。
これを買い求めるため店内は熱気むんむんの大混雑。
僕みたいにひとつずつ買って味見をしようという客は少数で、
みんなお土産として、どっさり箱買いするのが普通です。
プチュパンはニラ玉入りのほの甘いおかずパン。
ティギムソボロはカリカリ食感のあんドーナツ。
どちらも「すごく美味しい!」と絶賛するほどではないですが、
じわじわと記憶に残り、きっとまた食べたくなるような味。
まずは話のタネに食べて、いつの間にかハマるという感じでしょうか。
僕も次また大田に行ったら、たぶん買ってしまうと思います。
特にニラパンのほう。
ありがたいことに大田駅の中にも支店が出ています。
店名:聖心堂
住所:大田市中区銀杏洞145
電話:042-256-4114
そんなパンを食べた後にこちらも大田名物の……。
・オルクニカルグクス(激辛うどん、얼큰이칼국수)
煮干しダシに粉唐辛子をたっぷり入れた真っ赤なスープに、
生の春菊を自分で投入しながら食べるのが大田式です。
このオルクニカルグクスもかつてメルマガで紹介しました。
そのとき、ちょうど名物通りが再開発に引っかかり、
「もっとも古い店は、立ち退きをもって店を閉じたという」
という報告をしていました。
第246号/大田にも名物料理があるのだ!!
https://www.kansyoku-life.com/2000/02/2304.html
その元祖店が2012年に場所を移して復活。
そんな話を聞いて、また食べに来たということです。
ひとつ発見だったのは、2011年当時に食べたものと違い、
コチュジャン系のどろどろが感じられなかったこと。
店の人に聞いても、
「コチュカル(粉唐辛子)しか使ってないよ」
ということなので、どろどろは亜種のひとつなんですね。
オルクニカルグクスの源流を知ることができたのは収穫でした。
店名:コンジュ粉食
住所:大田市中区文昌洞37-4
電話:042-582-8284
そしてもうひとつ。
オルクニカルグクスのタイプではありませんが、
こちらのカルグクスも大田を象徴する一品と語られます。
煮干しダシに、エゴマをどっさり振りかけているのが特徴。
1961年創業という「シンドカルグクス」の看板メニューで、
カルグクス店としてはここが大田でもっとも古いそうです。
先の「コンジュ粉食」が1975年頃の創業ということなので、
当初は大田でもこういったカルグクスが主流だったのでしょう。
あるいはこの「シンドカルグクス」でも卓上を見ると、
粉唐辛子と、ヤンニョムジャン(薬味醤油)が用意されています。
人によっては真っ赤にして食べることもあるのかもしれません。
素地として、そういう食べ方があったのかなぁ、とも。
そのあたりはまたじっくり研究したいと思います。
店名:シンドカルグクス
住所:大田市東区貞洞30-16
電話:042-253-6799
さて、以上が7泊8日の出張で食べたもののダイジェスト。
冒頭でも書いた通り、これらの取材は夏に出す本と、
秋に予定しているグルメツアーの食事に反映されるはずです。
そちらのほうもぜひご期待いただければ幸いです。
ブログのほうでは、この後「栄州報告」を始める予定。
出張後でもろもろの仕事に追われておりますが、
なんとか熱の冷めないうちに書いていきたいと思います。
また、この栄州話。
月末に横浜の講座でも披露しようと考えています。
韓国の地方料理はこれまでもテーマにしてきましたが、
せっかく取材をしたので今回の話題も盛り込もうかなと。
お時間ある方は、ぜひおいでください。
【講座】韓国の美味しい町めぐり- 郷土料理を訪ねて
http://bit.ly/1j3vLja