コリアうめーや!!第295号
<ごあいさつ>
6月15日になりました。
先日までソウル出張に出ていたのですが、
連日30度を超える真夏日でした。
梅雨時だけに、雨の心配もしていたのですが、
それがバカバカしいほどのギラギラ陽気。
外を歩いているだけで汗が滴り落ち、
パッピンスや冷麺が美味しい日々でした。
一足早い、夏を満喫した気分ですね。
さて、そんな中、今号のテーマですが、
ちょっと変わった切り口を選んでみました。
料理そのものではなく、飲食店における、
注文時の小さな悩みに焦点を当てます。
自分だけで悩むのは面倒くさいので、
ここはひとつ皆様と共有しようと思った次第。
コリアうめーや!!第295号。
電卓を手元に置いて、スタートです。
<韓国料理とグラムのややこしい関係!!>
6月3日から12日まで。
10日間というやや長めの出張に出てきた。
珍しいことに、地方へはほとんど足を伸ばさず、
ひたすらソウルの町だけを取材していた。
ここまでソウルと真剣に向き合ったのは久しぶり。
おかげさまで新ネタにもずいぶん出合うことができた。
だが、まだそれをここで書くことはできない。
あくまでもお仕事なので発表先は別。
ということで、このメルマガを書くにあたり、
さてどうしたものかと悩んでいたりする。
普段なら、合間に個人的な取材もするのだが、
今回はスケジュールがギチギチでそれも難しかった。
「出張直後なのにネタがない!」
という間抜けな状況なのである。
やむを得ないので、仕事に関係のない部分を切り出し、
取材のこぼれ話的にひとつテーマを作ろうと思う。
書いてみたいのは……。
「店員さんの憂鬱!」
という切り口である。
取材の合間にいろいろ店の人から話を聞くが、
そこには記事にならない面白話も多く存在する。
例えば、今回は焼肉店の取材で店員さんから、
日本人客に関する次のような悩みを聞いた。
まあ、正直悩みとまでいうと大げさなのだが……。
1、ガイドブックとまったく同じ盛り付けが要求される
2、ニンニクと一緒に青唐辛子を焼き、そしてそれを食べない
3、100g当たりいくら、という表示を注文しようとする
といった感じ。
日本人客の気持ちもわかる身としては、
なるほどなぁ、という話であった。
まず、1のガイドブックと同じ盛り付けというのは、
取材側である僕たちにとっても重要なポイント。
韓国に限らず、飲食店の取材では写真の見栄えを考慮して、
普段よりも多めの盛り付けで出てくることがある。
普段よりも丁寧に盛り付ける、ぐらいならまだしも、
量まで増やされると、これは後々のトラブルにつながる。
場合によっては、僕ら媒体側の嘘になってしまう。
なので、
「お客さんに出すように作ってください!」
というのは僕が取材時に毎度繰り返すセリフだ。
2の青唐辛子は僕自身も稀に見かける事例。
焼肉店ではニンニク、青唐辛子、ネギサラダなどが用意され、
これらを組み合わせつつ、葉野菜で包んで食べる。
そのほか焼き野菜があり、ニンニクも好みで焼くため、
青唐辛子も焼いて食べるのだろう、との誤解は納得できる。
きっとピーマンのような感覚で網に載せるのだろう。
だが、韓国では青唐辛子を焼く習慣はないため、
なぜ日本人はそうするのか、しきりに不思議がっていた。
しかも焼くだけ焼いて、食べない人が多いらしい。
青唐辛子の辛さを考えると、それが致し方ないのもわかる。
最後の3は、今年から始まったトラブルだ。
今年1月1日から、調理前の食肉を提供する飲食店は、
価格とともに、100g当たりの価格表示を義務付けられた。
店によって表記方法はまちまちだが、
だいたい、このような感じで記載されている。
・サムギョプサル1人前(180g)1万3000ウォン
100g:7222ウォン
・テジカルビ1人前(300g)1万3000ウォン
100g:4333ウォン
・牛カルビ:1人前(300g)2万5000ウォン
100g:8333ウォン
この法令の改正で、飲食店はメニューを刷新したり、
あるいは手書きで追加をする必要に迫られた。
店にとっては手間だが、客の立場としてはありがたい。
上記だけでも、グラム当たりのお得感がわかるので、
「サムギョプサルに比べてテジカルビは安いな!」
「むしろ、牛カルビも1000ウォンちょっとの差だな!」
「じゃあ、今日は贅沢に牛カルビを食べよう!」
といった判断ができる。
僕もこの法令改正は今回の取材で初めて知ったので、
韓国政府もなかなかやるじゃないか、と思った。
こうした右へならえの号令は、韓国の得意とする分野だ。
だが、実際の現場ではトラブルも多いようで、
そもそも外国人客はこのルール自体を知らない。
なので、このメニューを見て、
・サムギョプサル1人前(180g)1万3000ウォン
100g:7222ウォン
「じゃあ、100gのコレをください!」
と7222ウォンの部分を指さしてしまうのだ。
少しだけ食べたい、あるいは単純に安いほうを選ぶという、
シンプルな判断だが、飲食店としてこれは困る。
あくまでも1人前は180gであり、価格は1万3000ウォン。
100gで7222ウォンのメニューは存在しない。
「いえいえ、それは注文できないんですよ!」
と上手に説明、また理解するだけの語学能力は双方になく、
メニューを挟んでオロオロすることが増えたのだという。
法令を施行してみて、初めてわかる苦労といえよう。
「お願いだからガイドブックに詳しく書いてくれ!」
と店員さんから頼まれてしまった。
また、その話を聞きながら僕なりに思ったことがある。
焼肉店におけるグラム表示と、注文の関係は、
店ごとに違いが多く、ほかにも多くの問題を含んでいる。
さらにややこしい話になるが、これもきっかけ。
せっかくなので、もう少し踏み込んでみよう。
まず、難しいのが1人前とされる量。
上の例でもサムギョプサルの1人前は180gで、
テジカルビ、牛カルビの1人前は300gだ。
ひと口に1人前といっても、店ごとにそれぞれ違うし、
同じ店の中でも、部位によって違ったりする。
しかも、テジカルビと牛カルビは一見お得そうだが、
サムギョプサルは生肉で、両者は味付けという違いがある。
味付けをした肉は、漬けダレの重さが含まれるので、
300gといえども、生肉の量では単純に比較ができない。
また店によって味付け前のグラムを表示する場合もあり、
そうなると店ごとにいちいち確認する必要が出てくる。
さらに、テジカルビ、牛カルビの場合は……。
「骨の重さが含まれる!」
という事実もあったりする。
以前、カルビサル(骨なしカルビ)の店を取材した際、
店の社長が自信満々で、
「ウチは骨なしで300gの大盤振る舞いなんだ!」
と語っていた。
確かに牛カルビの場合、骨をかじるのは醍醐味だが、
それも重さに入ると思うと、なんだか損をした気にもなる。
骨付き部位の場合は、そのあたりも考慮しなければいけない。
あるいは、初めから1人前の量をだいぶ少なくしておき、
「ウチは初回注文3人前からお願いしています!」
という店も最近は出てきた。
韓国では初回2人前から、追加1人前からというのが、
これまで多くの店における暗黙のルールだった。
だが、最近はそれもだいぶ崩れる傾向にあり、
1人前から頼める店、3人前からの店などさまざまだ。
それらも含めると、話はますますややこしくなる。
どうせ100g当たりで表記を徹底するのなら、
そのあたりも、統一してもよいのではないか。
そんなことを書きながら、ちらっと思ったのだが、
それも実際やろうとすると、トラブルがあるのだろう。
むしろ消費者として賢くなるほうが早道かもしれない。
最後は余談。
この法令による義務は主に焼肉店へのものだが、
個人的に焼肉以外にも、グラム問題はあると思っている。
具体的には、
・サムゲタン(ひな鶏のスープ)
・タッカンマリ(丸鶏の水炊き)
・ヤンニョムチキン(辛口のフライドチキン)
・カンジャンケジャン(ワタリガニの薬味醤油漬け)
といった料理の数々。
上3種は丸鶏、または丸鶏1羽をカットして使い、
いちばん下は、ワタリガニを丸ごと使って作る。
いずれも素材の大きさによって、見た目がだいぶ変わり、
しかも、これがまた店によってかなりの差がある。
僕が個人的に取材をした範囲では、サムゲタンの場合、
400~550gのひな鶏を使うことがほとんど。
タッカンマリ、ヤンニョムチキンなどの丸鶏料理は、
700~1100g程度で作っている店が多い。
また、カンジャンケジャンは1杯のワタリガニ当たり、
だいたい250~400gといった範囲に収まる。
ただ、これらは焼肉と違って表示義務がないため、
あえて店の人に聞かない限りはわからない。
一概に大きいからよいともいえないのだが、
サイズによって食べ応えが、だいぶ違ってくるのも事実。
そしてまた、当然価格との兼ね合いも出てくる。
韓国は海外からの観光客誘致に熱心なので、
いずれこのへんも、表記が義務付けられるかもしれない。
すでに焼肉店のグラム表示だけでなく、
・店内での禁煙(一定面積以上の店舗)
・主要食材、米、野菜などの原産地表記(全店舗)
・店頭での価格表示(一定面積以上の店舗)
といったルールが義務化されている。
韓国料理とグラムのややこしい関係。
こだわる人はぜひ僕と一緒に頭を抱えて欲しい。
<新刊情報>
韓国料理には、ご用心!
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http://books.rakuten.co.jp/rb/12257440/
<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
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http://www.facebook.com/kansyokunikki
<八田氏の独り言>
中には600g単位で販売する焼肉店も。
これは1斤が600gであることに由来します。
コリアうめーや!!第295号
2013年6月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com
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