前編からの続きです。
3日目の朝ごはんは江陵名物の草堂豆腐からスタート。
にがりのかわりに、海水を使って作る豆腐のことです。
名前の由来となった草堂洞に豆腐専門店が集まっています。
注文したのは写真のスンドゥブ。
一般的にスンドゥブというとチゲを想像しますが、
もともとは押し固めない段階での豆腐を表す単語です。
もろもろとした豆腐に、薬味醤油をかけて味わうのですが、
ほんのり塩気があるので、かけない状態でも充分美味。
むしろ豆の甘味を感じるという意味ではプレーンがベストですね。
段階的に薬味醤油や、古漬けキムチを足していくのがオススメです。
右奥に見えているコンビジチゲ(おからのチゲ)と、
切れてしまいましたが、その奥にあるテンジャンチゲ(味噌チゲ)。
あと青唐辛子のテンジャンチャンアチ(味噌漬け)で料理はすべて。
シンプルですが、いずれもの味が素晴らしく大好評でした。
その後、烏竹軒、船橋荘という史跡を見学し……。
一路、東海岸沿いをひたすら北上し、到着したのが巨津港。
江原道でも最北に位置する高城郡の小さな港町です。
東海岸の中でももっとも有名なスケトウダラの産地であり、
冬場になると、スケトウダラ祭りも開催されるという地域ですね。
そんな巨津で味わうべきスケトウダラ料理の代表というのが、
写真の、ミョンテチリクク(スケトウダラの澄まし仕立て鍋)です。
スケトウダラの鍋というと、たいてい真っ赤に仕上げますが、
さすが産地だけあって、素材の味を全面に押し出した調理法。
冬場なので、もしかしたらな生のスケトウダラが、と期待したのですが、
わずかに早かったようで、まだ冷凍物のスケトウダラでした。
とはいえ、抜群の鮮度で急速冷凍したスケトウダラは新鮮そのもの。
ありがちなくさみは微塵もなく、身の旨さ、ダシの旨さを堪能しました。
それと圧巻だったのが、パンチャン(副菜)の数々。
江原道はパンチャンを見ることで地域性がさらに感じられます。
山間部では山菜やキノコが、海岸部では魚介、干物、塩辛が活躍。
なんて話も、先日メルマガに書いていたりします。
第276号/江原道はパンチャン天国なのだ!!
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1431.html
ちなみに上に並んでいるパンチャンの数々は……。
・ミヨクムチム(ワカメの和え物)
・アガミカクトゥギ(スケトウダラのエラ入り大根キムチ)
・カジャミシッケ(カレイの馴れ寿司)
・オイムチム(キュウリの和え物)
・パギムチ(葉ネギのキムチ)
・ミョンナンジョッ(明太子)
・コンチジョリム(サンマの煮付け)
・コダリジョリム(生干しスケトウダラの煮付け)
・クァリコチュチム(シシトウの蒸し煮)
・カジャミグイ(カレイの焼き魚)
・チョンガクキムチ(小大根の角切りキムチ)
・オジンオジョッ(イカの塩辛)
・カムジャジョリム(ジャガイモの煮物)
ざっとこんな感じ。
一応、上段左から右、中段左から右、下段左から右と、
順番に並べてみましたので、それぞれ確認してみてください。
なお、カムジャジョリムだけ写真の外にハミ出ています。
いやはや、なんていうか江原道料理のオンパレードですし、
それ以前に、スケトウダラのオンパレードですよねぇ。
身の部分は鍋で食べるとして、エラを大根キムチに使い、
卵を塩辛(明太子)にして、生干しの煮付けも副菜の一品に。
そのほかにもイカ、カレイ、サンマは東海岸の象徴ですし、
ジャガイモなんかも、江原道の名産品ですからね。
改めて眺めても、なんとも贅沢な食卓といえましょう。
もし、みなさんも江原道に出かけることがあれば、
出てきたパンチャンのひとつひとつに注目してみてください。
江原道の食文化を、もう1歩深く体感できるはずです。
お腹がいっぱいになったら、さらに海岸沿いを北上し、
北朝鮮を眺められる、高城統一展望台を見学しました。
南北関係の悪化でいまは交流が止まった状態ですが、
本来、高城といえば、金剛山観光の窓口となっている地域。
いずれ事態が好転すれば、大勢の観光客で賑わうはずです。
北朝鮮を眺めた後は、進路を南に戻して束草に到着。
北朝鮮出身者の多く住む、アバイマウルをさらっと見学し、
アバイスンデ(腸詰め)とオジンオスンデ(イカの肉詰め)を味見。
さらにドラマ「秋の童話」に登場したケッペ(渡し船)に乗りました。
江原道観光では、絶対外せない象徴的なスポットですよね。
その後、束草観光水産市場をぶらぶらと散策しつつ、
名物である釜山、南浦洞式のホットク(蜜入りお焼き)のオヤツ。
夕食は韓国人ブロガーが「レインボー」と称するムルフェでした。
コチュジャン、酢などで味付けをした氷水に、
たっぷりの生野菜と、旬の刺身を盛り付けた料理です。
韓国版冷や汁、などと表現すればわかりやすいですかね。
僕が夏に食べたときは、刺身は全部で8種類。
ナマコ、ホヤ、ウニ、スルメイカ、サザエ、ユムシ、
カレイ、ヒラマサというラインナップでした。
それが冬バージョンになっており、刺身が12種類に増量。
カレイ、ヒラメ、クロソイ、ブリ、アワビ、サザエ、
ウニ、ホヤ、ユムシ、スルメイカ、ワカメ、ボラ……。
で、12種類全部ありますよね。
ここでもまた、旬の姿が顕著に表れています。
一緒にソプチュクと呼ばれるムール貝のお粥も賞味。
標準語ではホンハプ(紅蛤)と呼ばれるムール貝ですが、
襄陽を中心として、東海岸沿いではソプと方言で呼ばれます。
お粥のほか、ソプクク(ムール貝のスープ)も有名らしいですね。
菜っ葉を入れて、味噌仕立てにするスープだそうです。
そしてこちらは束草観光水産市場で買ったタッカンジョン。
フライドチキンに甘辛い蜜を絡めた、子どもに人気の料理です。
市場の一角に、タッカンジョンの専門店がずらり並んでおり、
いわゆるB級グルメのような感じで、名物になっているんですよね。
これもまた話のタネとして、皆様に召し上がって頂きました。
なお、この日のマッコリはオクスス生マッコリ。
江原道の特産品である、トウモロコシを原料にしたマッコリです。
マッコリの飲みごたえと、コーンスープのような甘い風味。
そのコントラストは、なかなかに衝撃的な体験です。
3日目の宿泊先は雪岳パークホテルでした。
そして早くも最終日。
あっという間でしたが、4日目の朝食は襄陽の五色薬水へ移動。
薬水(炭酸を含む湧水)で炊いたごはんと山菜料理の定食なのですが、
バタバタしていて、ここだけ料理の写真を撮り損ないました。
薬水で炊いた「釜炊きのごはん」をリクエストしていたのですが、
それがうまく伝わっておらず、普通の茶碗で出てきたのがその理由。
「釜じゃないじゃん!」
「釜じゃなくても、薬水で炊いているから一緒よ!」
「前来たときは釜で炊いていたじゃん!」
「釜は10個しかないのよ!」
というような予想外のハプニングに見舞われたのが裏事情です。
毎度、予想外の事態というのは必ずあるのですが、
最終日に来てやっぱり来たか、と思えるような展開でした。
まあ、そんなやり取りがあったせいか、
料理は山ほどおかわりが出てきましたけどね。
料理の一覧はこんな感じ。
・ヤクスパプ(薬水で炊いたごはん)
・テンジャンチゲ(味噌チゲ)
・ナムル(ワラビ、アザミ、シイタケ、シラヤマギクのナムル)
・コムチィチャンアチ(オタカラコウの醤油漬け)
・サンマヌルチャンアチ(行者ニンニクの醤油漬け)
・ムマルレンイチャンアチ(干し大根の醤油漬け)
・チャムナムル(ミツバのナムル)
・タンコンジョリム(ピーナッツの煮付け)
・モギポソッムチム(キクラゲの和え物)
・トラジムチム(キキョウの根の和え物)
・オイムチム(キュウリの和え物)
・ペチュギムチ(白菜キムチ)
・カリビジョッ(ホタテの塩辛)
・ミョルチボックム(ジャコの炒め物)
先ほどのスケトウダラオンパレードと比べると、
圧倒的に「山!」という姿が見えてくるかと思います。
海と山の距離が近く、その両方を楽しめる江原道では、
こうした海と山の対比が、食卓にくっきりと現れてきます。
それを同時に楽しめるのが、何よりの魅力ですね。
最後の昼食は、春川名物のタッカルビ(鶏肉と野菜の鉄板炒め)。
繁華街の「明洞タッカルビ通り」が有名ですが、
今回は地元人気の高い、後坪洞エリアを目指してみました。
他の料理と比べると、郷土色は若干薄いかと思いきや……。
「タッカルビってこんなに美味しい料理だったんだ!」
と目からウロコの方がいらしたのは嬉しかったですね。
どんな料理でも本場で食べれば、やっぱり別物。
そういった意味でも、最後に加えてよかった一品でした。
なお、最後のマッコリは、五色薬水で買ったアザミのマッコリ。
また、ほんの少量ずつでしたが、山ブドウのジュースと、
三枝九葉草酒(イカリソウ酒)も、みんなで味見をしました。
ということで、以上が江原道ツアーの報告。
3泊4日で全9食+さまざまなオヤツということで、
ずいぶんバラエティに富んだ郷土の味覚を楽しめたと思います。
まだまだ、江原道にはたくさんの美食が眠っておりますが、
なんとか、その片鱗ぐらいは手を伸ばすことができたかなと。
山と海のコラボ、そして短期間でガラッとかわる旬の味覚。
そんなところを、感じて頂けたなら幸いです。
ご参加頂いた皆様、そして三進トラベルサービスの皆様、
今年も美味しいツアーを、本当にありがとうございました。
ツアー中から早くも、
「来年はどこ?」
という声があったので、頑張って準備したいと思います。
現段階では、慶尚道方面とぼんやり考えておりますが、
具体的に決まるのは、まあ来年の夏ぐらいでしょうね。
それまでしっかり食べ歩いて、いいところを探すつもりです。
また来年、まんぷくツアーでお会いしましょう!