ここ数年、韓国料理のボーダーラインについて考えていますが、
その作業はきっと、このような店に出会うためのものでしょう。
お店の常連さんと話をする機会があったのですが……。
「韓国料理の嫌いなお友達もここだけは気に入ってくれるの!」
というセリフが印象的でした。
その評価を「韓国料理から遠い」という意味でとらえるべきか、
嫌いな人にも受け入れられる韓国料理を再構築したと考えるべきか。
たぶん、そのどちらであっても、お店の方には褒め言葉ですね。
日本にはいま、いろいろなコンセプトの韓国料理店ができており、
たくさんの方が新しい韓国料理の姿を模索しています。
もちろんそれは日本に限ったことではなく、韓国本土でも同じことです。
そうした流れを踏まえたうえで、この店がやろうとしているのは、
おそらく韓国料理の範疇から、いちばん遠くへ飛ぼうとする挑戦ではないかと。
そして、その着地点において、それでもそれを韓国料理だとする根拠を、
「野菜!」
という点に置いたのだろう、との印象を受けました。
冒頭の写真は、
「旬野菜のお花畑 東京初 霧島熟成神話豚の抱擁食べ」
というメニュー。
たっぷり野菜と豚肉という組み合わせ自体は韓国的ですが、
そこに居並ぶメンバーは、明らかに韓国的ではないですね。
初めて名前を聞く野菜も多く、記憶が曖昧ですが……。
・紅芯大根
・空芯菜の新芽
・ブラックチェリートマト
・マイクロトマト
といった名前が飛び交っておりました。
しかも、豚肉にかかっているのは特製バーニャカウダソース。
また、野菜で肉を包むのではなく、
「肉で野菜を包んで食べてください」
という提案です。
写真は前後して、いちばん最初に出た……。
「本日、旬野菜のナムル」
豆モヤシ、ニラ、レンコン、小松菜、ナス、ゼンマイという面々です。
コミョン(飾り)的に、違った色の野菜も載っていました。
こちらは燻製仕立てにしたサバの刺身。
メニュー名は、
「長崎県松浦のスモーク鯖 まるで生ハム カルパッチョ仕立て」
ということで思いっきりイタリアン寄りですが、
両脇にかかっているソースはチョジャン(酢を混ぜたコチュジャンダレ)でした。
このサバ、脂も乗っていて旨かったですねぇ。
「おすすめ! 収穫の喜び 本日の旬野菜 五色盛のジョン」
そろそろみなさんお気付きかとは思いますが、
メニュー名の付け方も、いわゆる韓国料理とは異なりますね。
そしてまた、野菜寄りの姿勢もよく現れています。
この日、ジョンになった野菜は、
・エゴマの葉
・紅芯大根、
・ナス
・レンコン
……と、もうひとつ一番奥を失念しました。
写真を見る限り、パプリカのようではありますが……。
「蕾の花ニラと甘味の黄ニラ 五彩チャプチェ」
見た目ではいちばん普段見る韓国料理に近いですが、
味付けの面で、ちょっと変わった工夫が凝らされていました。
お店の方に隠し味の答えを聞いちゃったので書きませんが、
「なるほど、そういう切り口もありますか」
と勉強になった次第です。
「下町屋台セレブ風 トッポギ」
韓国餅をやぐら状に組むスタイルは韓国でも最近見ますね。
下町屋台で「セレブ風」というのは、不思議なネーミングですが、
オーソドックスな味付けを、ちょっと洗練させたという感じでしょうか。
「素材美食の塩プルコギ 東京初 霧島熟成神話豚で」
冒頭の写真「旬野菜のお花畑~」にも使われていましたが、
月間の生産がわずか15頭という、たいへん希少な豚だそうです。
食べると確かに、いい肉質、そして旨い脂、を実感できますね。
牛骨ベースのスープに、ニラや水菜もどっさり入れて……。
しばし、煮込むとこんな感じに。
濃厚、まろやか、そして何より豚が美味しい鍋料理です。
残った煮汁には、ウドン、ラーメン、ごはんも投入できます。
デザートのジェラートは塩麹と甘酒。
そしてホウレンソウとトマトがありました。
きちんとした締めくくりのメニューがあるのもいいですね。
最初から最後まで、しっかり楽しませて頂きました。
韓国料理店としては異色な部類に入るのでしょうが、
それを百も承知でいろいろ試しているのがよく伝わってきます。
自由ヶ丘という場所にも合っているだろうと思いますし、
常連さんたちの話からも、受け入れられていると感じました。
「普通の韓国料理とは違うけど、これはこれで美味しい」
というのがベーシックな楽しみ方かとは思いますが、
こだわる人なら、お店が模索する「道」の部分を楽しむのもアリかと。
なにしろ、こちらのお店はまだオープンから半年少々。
「道」の部分で共感できる人がたくさんいればいるほど、
さらに面白い方向へと、進化していくのではないかなと感じました。
個人的にも、そういった系統の妄想は大好物。
いろいろ旬によって野菜の種類なども変化するようなので、
また機会を見て、足を運んでみたいと思います。
店名:美食韓国 五味五彩
住所:東京都目黒区自由が丘2-11-16地下1階
電話:03-3718-5333
営業:11:00~15:00、17:00~23:00(月~金)、11:00~23:00(土、日、祝)
定休:不定休
http://gomigosai.com
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