コリアうめーや!!第210号
<ごあいさつ>
12月になりました。
いよいよ今年も残り1ヶ月ですね。
すでに紅白歌合戦のメンバーが発表になり、
今年の流行語大賞も決まりました。
あとは10大ニュースと今年の漢字が気になるところ。
日々、急速度で年末気分が盛り上がっています。
僕にとっても年末というのは大きなキーワードで、
このメルマガにおいても、定番の企画があります。
1年の最後を締め括る12月15日配信号は、
その年食べた美味しいもののベスト10を発表。
はてさて、何をランクインさせようか、
今から悩み始めているところです。
そしてもうひとつ。今号のメルマガでは、
また別のベスト10を作成してみました。
今年1月に、ある目標を掲げたのですが、
その総括的なことをしてみようという企画です。
年末に1年を振り返る、その第1弾。
コリアうめーや!!第210号。
ぐるり首をひねって、スタートです。
<2009年仁川訪問の年を振り返る!!>
今年の1月15日。
僕は「アホになりたい」と宣言した。
アホになるとわざわざ宣言すること自体、
アホ極まりない話だが、それはそれで一応の意味があった。
僕が求めたのは、むしろ「踊る阿呆」である。
阿波踊りの囃子言葉として知られる有名フレーズ。
物事は見ているよりも、実際に参加するほうが楽しい。
目の前で笛を吹いている人たちがいるのだから、
僕も傍観者ではなく、積極的に踊ろうではないか。
という意味合いでのアホ宣言であった。
コリアうめーや!!第189号
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-860.html
細かい能書きはバックナンバーを見て頂くとして、
僕がやりたかったのは、観光客誘致に力を注ぐ仁川市の応援。
2009年は「仁川訪問の年」に指定されており、
国内外に向け、仁川の魅力を広くアピールする年であった。
僕は兼ねてより、仁川の食に興味を持っており、
「今年は仁川料理を食べまくろう!」
と年頭に強く誓ったのである。
なお、その強い誓いというのが少々空回りし、
意気込んだつもりでスベったのが冒頭のアホ宣言。
踊る阿呆に引っ掛けて面白いことを書いたつもりが、
むしろ本物のアホに見えているのがなんとも悲しい。
だが、今年の僕はアホなりにけっこう頑張った。
アホな宣言でも、声を大にして言ってみるもので、
いくつかのメディアから、仁川関係の仕事を頂いた。
在日系新聞の統一日報では、仁川料理の連載コラムを持ち、
広告特集として朝日新聞にも仁川料理の記事を書いた。
先日は仁川観光公社の方とともに市内で巡り、
郷土料理を食べ歩く、という名誉な取材機会も頂いた。
仁川料理の魅力にどっぷりとハマった1年。
すでに「仁川訪問の年」は残り1ヶ月だが、
総括の意味も込めて、食べた料理をまとめたいと思う。
まず、仁川料理の大まかな特色から。
仁川市は韓国に6ヶ所ある広域市のひとつ。
ソウル、釜山に継ぐ、韓国第3位の人口を誇るとともに、
首都ソウルに隣接する経済、貿易の要所でもある。
観光客にとっては仁川国際空港がまず有名だが、
古くから港町としても栄え、玄関口の役割を果たしてきた。
現在でも仁川駅前には韓国最大の中華街が広がり、
各国の文化を現代に残す、異国情緒ある街としても知られる。
こうした背景から、独特の食文化が多く生まれ、
また港町であることから、魚介類の料理も発達している。
首都圏でありながら、他地域にはない料理の数々と、
新鮮な魚介の両方を楽しめるのが仁川の大きな魅力だ。
そのため僕などは、
「仁川は楽しい街だなあ!」
と常々思ってきたのだが、
仁川空港に降り立つ観光客は、ほとんどがソウルに直行。
仁川市内を目的地にする人は基本的に少数であり、
それが仁川好きとしてはなんとも寂しい。
海岸部や島嶼部にはドラマ、映画のロケ地が多いため、
ロケ地ツアーの場所として韓流ファンの注目はそれなりに高い。
だが、それ以上の情報は少なく、
「魅力がうまく伝わっていない!」
というもったいないエリアでもある。
そういった意味では、意義のある訪問の年であった。
といったところで、いよいよ本題。
総括なので、まずは食べた料理を一覧にしてみる。
それぞれ語りたい要素の多い料理ばかりだが、
いくつかはメルマガやブログでも語っているので極力コンパクトに。
また直近に仕入れた情報は、来年以降のメルマガに回す形で、
その詳細な魅力をフォローしていきたいと思う。
それでは、ずらり。
・カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/延寿区東春洞ほか)
・コッケタン(ワタリガニ鍋/延寿区玉蓮洞)
・コンガルパン(中国風のパン/中区北城洞)
・サムチグイ(サワラ焼き/中区銭洞)
・スンムキムチ(カブのキムチ/江華郡全域)
・セスッテヤネンミョン(洗面器冷麺/中区花平洞)
・タッカンジョン(鶏肉の蜜揚げ/中区新浦洞)
・チャジャンミョン(ジャージャー麺/中区北城洞)
・チャンオグイ(ウナギ焼き/江華郡仙源面)
・チュオタン(ドジョウ汁/南洞区雲宴洞)
・チョルミョン(辛味ダレの和え麺/中区新浦洞)
・ヘムルタン(海鮮鍋/富平区富平洞)
・ペンデンイフェムチム(サッパの刺身和え/中区港洞)
・ムルトンボンイタン(アンコウ鍋/南区龍現洞)
・ムルトムボンイチム(アンコウの蒸し煮/南区龍現洞)
とりあえず食べたものだけで15種類(50音順)。
料理名の後には、カッコで解説と地域名を入れてみた。
仁川市内の各地で食べられる料理も多いが、
とりあえず名物通りなど象徴的な場所があるものも多い。
興味のある人は、訪れるときの参考にして欲しい。
さらに、これ以外にも食べ逃した料理がいくつかあり、
個人的にはもうあと数回行かねばと思っている。
仁川は特に、島嶼部にも興味をそそる料理が多く、
例えば、北朝鮮まで約10キロの距離にあるペンニョン島。
牡蠣の名産地でありつつ、独特の冷麺も郷土料理に持つ。
だが、島だけに行くだけでも困難な場所で、
仁川港から高速フェリーに乗っても4時間以上かかる。
1年かけて、あちこち食べ歩いたといっても、
まだまだ全体像を知るには、ほど遠い段階なのだ。
そのぐらい仁川の食文化は多岐に渡り、奥も深い。
とはいえ、上記の例だけでも充分楽しめるラインナップ。
その魅力を少しずつ、ざっくり紹介していきたい。
紹介方法は少し悩んだが、簡潔にベスト10形式で。
味、価格、希少性、話題性、到達難易度などを考慮しつつ、
ごく私的な判断基準でポイントをつけて並べてみた。
食べたときの感動なども加味されているので、
あくまでも個人的なベスト10としてご覧頂きたい。
1位:ペンデンイフェムチム(サッパの刺身和え)……21P
江華島を中心に漁獲されるペンデンイの刺身和え。
和名ではサッパ、岡山県ではママカリとも呼ばれている。
コハダにも似た青魚で、3~7月がいちばん美味しい。
刺身にしたものを生野菜と辛い薬味ダレで和え、
ごはんと一緒に混ぜて食べると、たいへんに美味。
仁川港のある沿岸埠頭に専門店が並んでいる。
2位:チャンオグイ(ウナギ焼き)……20P
江華島のトリミ地域に専門店が並んでいる。
かつては天然物がとれたが、現在は干潟での天然風養殖が中心。
脂を落とすため、下焼き前に身をぶつ切りするのが特徴で、
1度焼き、2度焼きの後、コチュジャンダレに浸して3度焼きする。
余計な脂をしっかり落としつつも、身は肉厚でむっちり。
値段こそ1キロ8万ウォンと高価だが、満足度は充分。
2位:チュオタン(ドジョウ汁)……20P
仁川式のチュオタンは麺をたっぷり入れて作る。
すりつぶしたドジョウの濃厚な旨味が、細身の麺に絡み、
味噌仕立てのスープをボリュームたっぷりに仕上げる。
ジャガイモや、エホバク(カボチャの未熟果)も入って具だくさん。
ニンニク、青唐辛子も入るが、全体的には穏やかな味わい。
4位:ムルトムボンイ(アンコウ料理)……18P
ムルトムボンイは仁川方言でアンコウのこと。
「水にドボンする魚」との意味で、かつては網にかかっても捨てられた。
1960年代後半から食用が始まると、一転して人気料理に。
ピリ辛のスープで仕上げる鍋のほか、野菜との蒸し煮も人気。
5位:ヘムルタン(海鮮鍋)……17P
仁川に水揚げされる海産物をどっさり入れた鍋料理。
ワタリガニ、テナガダコ、サザエ、タイラギ、ハマグリ、アサリ、
エビ、イカ、ムール貝、エボヤ、タラの白子、イカの卵、明太子など。
常時15種類前後の海産物を豪快に煮込んで仕上げる。
5位:チャジャンミョン(ジャージャー麺)……17P
仁川の中華街が発祥とされる中華風の麺料理。
黒味噌を麺と絡めて食べる、韓国式のジャージャー麺で、
仁川に伝えられてから、約100年の歴史を持つ。
100年前のチャジャンミョンを再現する試みも始まっている。
7位:コッケタン(ワタリガニ鍋)……16P
特産品のワタリガニをピリ辛のスープで煮込んだ鍋。
専門店で使われるワタリガニはメスが中心で卵を抱える。
甲羅の中にごはんを入れ、卵と混ぜて食べると美味。
7位:サムチグイ(サワラ焼き)……16P
たっぷりの油で揚げるように焼いたぶつ切りのサワラを、
地元で造られている仁川マッコリと一緒に味わう。
東仁川駅近くに専門店通りがあり、大勢の酔客で深夜まで賑わう。
9位:カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)……15P
名物のワタリガニを薬味醤油に漬け込んだ料理。
ぷりぷりの身が甘く、卵や味噌はとろとろにとろける。
コッケタンとともに仁川を代表するカニ料理として有名。
9位:セスッテヤネンミョン(洗面器冷麺)……15P
洗面器と間違えるぐらいの巨大な器に盛り付けた冷麺。
酸味の利いたスープにコチュジャンダレとすりゴマをたっぷり加える。
食べても食べても減らず、最後は自分との戦いになる超ボリューム。
次点:タッカンジョン(鶏肉の蜜揚げ)……14P
次点:コンガルパン(中国風のパン)……14P
次点:チョルミョン(辛味ダレの和え麺)……12P
以上、駆け足ながら食べた料理を紹介してみた。
ポイントは味だけでなく、価格や由来の面白さも含むので、
自分で作ったベスト10ながら多少の違和感がある。
あくまでも目安ということで読んでみて欲しい。
実はこのポイントを作ったのも、後々につながる構想のため。
少し前からの話だが、地方料理のリスト化を進めており、
さまざまな要素で地方料理を分類できないか試している。
味を優先する場合、珍しさや話題性を優先する場合など、
旅行のスタイルに応じて、地方料理を探索できないかという試みだ。
まだまだ作りかけだが、とりあえず仁川はだいぶ網羅できた。
その意味でも僕にとって、有意義な訪問の年だったと思う。
仁川の各料理をサンプルとしつつ、
今後はさらに各地方の料理探索も進める予定。
2010年はどのエリアを重点的に攻めようか。
それを考えているときがいちばん楽しい。
<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/
<八田氏の独り言>
仁川のほか全羅北道とも向き合った1年でした。
来年の有力候補は、釜山、慶尚南道、京畿道あたりです。
コリアうめーや!!第210号
2009年12月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com
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