コリアうめーや!!第154号
<ごあいさつ>
8月になりました。
いよいよ夏も本番という感じですね。
ぐずついた天気も微妙に続いているようですが、
カンカン照りの日も少しずつ増えてきました。
これでやっと暑い夏を満喫できますね。
おかげさまで、ここ最近は取材仕事が多く、
日中はほとんど外をウロウロしています。
どうしても家にこもりがちなこの職業。
今年はいくらか健康的な夏を過ごせそうです。
さて、そんな中、今号のテーマですが、
韓国料理にまた新たな可能性が生まれています。
とある企業が始めた、ちょっと面白い試み。
そこに少しだけ参加させて頂くことになりました。
コリアうめーや!!第154号。
営業マンの気概を学ぶ、スタートです。
<敏腕営業マンが売るスンドゥブチゲ!!>
「あ、もしもし! わたくし○○社の八田と申します!」
「はい」
「××様の奥様でいらっしゃいますか?」
「はあ」
「実はいま、××様のお宅のすぐお近くでですね!」
「3LDKの新築マンションをご紹介しておりまして!」
「ご興味、ご関心などいかがかとお電話させて頂きました!」
「ウチは持ち家なのでいりません」
ガチャン!
「もしもし! わたくし○○社の八田と申します!」
「お近くで新築のマンションを紹介しているものなんですが……」
「あ、けっこうです!」
ガチャン!
「も、もしもし! わたくし○○社の……」
「……(無言のまま)」
ガチャン!
「あれ、も、もしもし!?」
冒頭からいきなりなんだというような話だが、
一応、電話で行うマンションセールスの再現である。
家にいると、こうした電話が何本もかかってくる。
もううんざり、という人もいるに違いない。
実はこうした新築分譲マンションのセールスを、
僕は大学生だったときに、1年半ほどやったことがある。
もちろんアルバイトなので本格的な営業という訳ではない。
客の前には出ず、ひたすら会社から電話をかけるだけ。
僕の仕事はモデルルームに来場してもらうところまでだった。
モデルルームに来た客は、正社員が応対して本格的な営業を行う。
僕らアルバイトは、数打ちゃ当たるの乱れ打ち要員だった。
実際、こんな電話営業で効果があるのかと思うかもしれないが、
1日ひたすらかけていると、意外と興味のある人に当たる。
興味のない人には迷惑な話だが、やはり成果はあるのだ。
僕はこうして稼いだお金で、韓国留学に出かけた。
ちなみに1年半やって、それなりにアポイントは取ったが、
結局、契約にまで結びついた案件はひとつもなかった。
「どうやら僕に営業の才能はないようだ」
そう理解した僕は、アルバイトを辞めるときに会社員への道も諦めた。
どのみち留学から戻ってきたら、新卒での就職はできない年齢。
ならば好きな仕事をしよう、と心に決めたのがこの頃だった。
いまにして思えば、悪くない選択ではあったが、
その頃の成績を思うと、今でも営業という単語には挫折感を覚える。
バリバリの営業マンを見ると、正直その姿が少しまぶしい。
そんな僕のところに、つい先日。
ひとりの敏腕営業マンからメールがきた。
日本の某食品会社勤務。
「○大食品」と書くと微妙に伏せ字になっていないが、
メールの最後には必ず、
≪わんぱくでもいい。
たくましく育ってほしい。≫
と書いてある会社だ。
ハムやソーセージを主軸商品とする大手食品会社。
ちなみにその最初にメールを受け取った瞬間、
「♪ハイリハイリヒレ、ハイリホ~」
というCMソングが頭を流れたのは嘘ではない。
また、その直後に続く、
「大きくなれよー」
というセリフまでが続いたとき、
大きくなってしまった自分に気付いて妙に切なかった。
あのCMを見ていた頃は小学生だった。
そんな、ハイリホーな営業マン氏からのメール。
いったい何事かと、動揺しながら本文を読むと、
そこには意外なまでに情熱的な文章が綴られていた。
もちろん情熱的といってもラブレターなどではない。
情熱の矛先はスンドゥブチゲである。
フルフルと柔らかな豆腐を、鍋仕立てにした韓国料理。
そんなスンドゥブチゲへの思いが爆発していた。
どうやら会社でスンドゥブチゲの開発を進めているらしく、
僕のブログを参考にしながら、韓国料理店を巡っているらしい。
文中には、自分がこれまで巡った韓国料理店の名前が列挙してあり、
それが実に、つらつらと5行に渡って23軒!
「片っ端からスンドゥブを食べ歩いています」
と、メール越しに鼻息の荒さが伝わってきた。
僕も日々、韓国料理ばかりを食べる生活をしている身。
ここ1、2年スンドゥブチゲの専門店はずいぶんと回ってきたが、
それでも、数にするとおそらく10数軒程度だろう。
だが、このハイリホーな営業マン氏はわずか半年で23軒。
なんだかスゴイ人からメールが来た!
ということだけは、文面からすぐにわかった。
事実、ここ最近の日本ではスンドゥブチゲの店が急増。
スンドゥブチゲの専門店があちこちで次々にオープンしており、
新しい韓国料理店も、軒並みスンドゥブチゲを看板料理に据えている。
僕はかつてこのメルマガ(第124号)において、
「2006年はスンドゥブチゲの時代だ!」
と、大々的にぶち上げたことがあるが、
その勢いはまるで衰えず、2007年以降にも引き継がれている。
流行の料理として、いまや韓国料理の象徴的存在でもある。
どうやらハイリホーな営業マン氏はスンドゥブチゲにハマり、
営業の身ながら、仕事の垣根を越えて商品開発に挑んだらしい。
メールの用件をまとめると次のような内容だった。
「スンドゥブチゲは現在、日本で高い人気を誇っている」
「だが、日本のスーパーの店頭にはスンドゥブチゲが見当たらない」
「ないのならば、ウチの会社がやろうではないか」
「まずは色々な店のスンドゥブチゲを食べ歩きだ」
「23軒巡った成果を活かし、試作品がやっと完成した」
「ぜひ試食をして、意見を聞かせて欲しい」
ということだった。
唐突なメールではあったが、僕にとっても興味深い話。
企業が切り開こうとする、スンドゥブチゲの未来はいかなるものか。
大喜びで、ぜひ協力したいとの返信メールを送った。
ほどなく、黒猫ヤマトのクール宅急便が自宅に届いた。
届け先の住所を書いた用紙には「品名」という欄があり、
そこにはしっかりと「スンドゥブサンプル(3袋)」の文字が見えた。
しかもご丁寧に「ワレモノ」で「ナマモノ」の指示付き。
大事に、大事に送り届けられたのがよくわかった。
さっそく中から商品サンプルを取り出す。
サンプルと一緒にパッケージ見本も入っており、
そこには調理方法が書かれている。
1、スンドゥブチゲの素を鍋にあけて火にかける。
2、豆腐を入れてさらに煮込む。
3、皿に移して、卵を割り入れ、かき混ぜる。
なんとも手軽で簡単な調理方法。
つまり豆腐と卵と鍋があればすぐできるのだ。
ニンニクを刻んだり、粉唐辛子を入れる手間などまるでない。
調理に必要な時間も、せいぜい7、8分程度といったところだった。
確かにこれがスーパーに売っていたら便利だろう。
せっかくなので、器もチゲ用のトゥッペギに移し、
韓国で使うステンレスの茶碗にごはんを盛る。
冷蔵庫にあったキムチも、小皿に盛って置いてみる。
総調理時間10分でスンドゥブチゲ定食ができあがった。
早速、試食係として真剣に味見をしてみる。
ハイリホーな営業マン氏からは、
「厳しい、辛口のご感想を期待しております」
とのメールが来ていたが、
予想以上に、しっかりとスンドゥブチゲで驚いた。
市販品である以上は限界があるだろうと思っていたが、
「なんだ、うまいじゃん」
というのが正直な感想だった。
もちろん豆腐と卵だけなので、飲食店に比べれば具に弱さはある。
だが、そのあたりはインスタントラーメンの調理と同じで、
各家庭で工夫して具を足せば、さらに美味しくなるはずだ。
スンドゥブチゲの定番であるアサリを加えてみるとか、
あるいはネギや青唐辛子などの野菜、キノコ類を入れてもいい。
仕上げにゴマ油をたらしてみるのも悪くないだろう。
問題は、そうした工夫をいかに購入者に伝えるかだが、
そのあたりは商品の浸透を目指す過程で、宣伝に力を注げばいい。
まずは知名度の獲得と、アレンジ方法の細かな伝達。
時代は確実に来ているが、一般家庭まではまだ少し遠い。
商品よりも、スンドゥブチゲそのものの宣伝が必要となるだろう。
そして後日。
僕はハイリホーな営業マン氏と直接会うことになった。
開発秘話などを聞くとともに、スンドゥブチゲ話で盛り上がった。
辛口だったかどうかは微妙だが、感想もしっかりと伝えた。
また、喜ばしいことに、今後においても協力をとの話を頂いた。
韓国料理好きとしては願ってもないこと。
微力ではあるが、応援させて頂くことを約束した。
余談だがこのとき交換した名刺の裏が見事だった。
「八田 靖史様
お会いできましたことを 心より感謝いたします
ハイリホーな営業マン(仮名)」
もらった名刺にメッセージが書いてあったのは初めて。
また、お近づきの印にと栄養ドリンクを頂いたのだが、
そのラベルには「八田靖史様 商売繁盛ドリンク」とあった。
既製品のラベルをはがし、わざわざ自作したらしい。
こういうコネタの利いたプレゼントは僕の大好物。
このあたりはさすが百戦錬磨の敏腕営業マンである。
さて、敏腕営業マンが売るスンドゥブチゲ。
日本の一般家庭に果たしてどこまで浸透するものか。
全力で応援しながら、見届けたいと思う。
<お知らせ>
スンドゥブチゲの写真がホームページで見られます。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/
<八田氏の独り言>
「商売繁盛ドリンク」は滋養強壮、強精、中折れ防止、体力回復、
食欲・性欲・書籍売上アップ、マスコミ露出増加、に効果があるそうです。
コリアうめーや!!第154号
2007年8月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com