コリアうめーや!!第141号
<ごあいさつ>
1月15日になりました。
年末年始の連休から成人式を加えた3連休。
たっぷり骨休めをしたおかげで、
まだ調子が出ないという方もいることでしょう。
思わずカレンダーを眺めて、ため息などついてみたり。
次の大型連休は5月までありませんもんね。
早く来い来いゴールデンウィーク!
と言いつつ、僕自信はあまり関係がありません。
正月も2日から自宅でせっせと働いておりました。
年末に韓国で楽しんだツケが回り、
仕事が山のように溜まって泣きそうです。
まあ、自業自得ではあるんですけどね。
さて、そんな涙をぐぐっと拭い、
楽しかった旅行話を続けたいと思います。
ちょっと変わった角度からのテーマですが、
最終的にはやっぱり韓国らしい話に戻ります。
コリアうめーや!!第141号。
グラスを小粋に傾ける、スタートです。
<世にも不思議な韓国赤ワイン三昧旅!!>
韓国の酒といえば焼酎である。
よく冷やした焼酎をストレートでグイッ。
喉を焼くようなアルコールに「くはぁっ」と叫び、
ああ、韓国に来たなあ、との思いにふける。
サムギョプサル(豚バラ肉)をじりじりと焼きながら、
換気の悪い店内で、いぶされるように肉を食べる。
真っ白な煙の向こうには気のおけない友人がおり、
空になったグラスに、さっと焼酎を注いでくれる。
その嬉しさについつい杯を重ね、酔いも回り、
2次会、3次会と、もう止まらない朝までコース。
韓国が好きな人であれば誰しもが即座に、
同じ情景を頭に思い浮かべてくれることだろう。
何より楽しい、韓国旅行の醍醐味である。
そんな韓国旅行と切っても切れない関係の焼酎を、
なぜか年末の訪韓では、ほとんど飲むことがなかった。
むしろよく飲んでいたのは赤ワインである。
6泊7日の旅行で焼酎を飲んだのはわずか3回。
それに対して、赤ワインを飲んだのはなんと5回。
もうほとんど毎日のように赤ワインを飲んでいた。
これでは冒頭に書いた一連のイメージも、
次のように改変しなければならない。
韓国の酒といえば赤ワインである。
グラスをくるくると回しておもむろにクイッ。
熟成された甘味と渋味に「ふむ」とうなづき、
ああ、韓国に来たなあ、との思いにふける。
絶妙の焼き加減で出てきた仔牛のローストを、
高級感漂う店内で、最高のサービスとともに味わう。
テーブルの向こうには美しく着飾った美女がおり、
グラスを片手に、にこっとセクシーに微笑んでくれる。
その嬉しさについつい杯を重ね、酔いも回り、
ホテルに部屋を取って、もう止まらない朝までコース。
韓国が好きな人であれば誰しもが即座に、
同じ情景を頭に思い浮かべられる……訳がない。
韓国旅行の醍醐味でもまったくない。
こんな韓国旅行は世の中に存在しないのだ。
仮に存在したとしても、きっと僕には縁がない。
したがって、こんな韓国旅行は僕が認めない。
韓国は焼酎! 赤ワインなんか論外!
などという、どこか卑屈な灰色気炎を吐きつつ、
それでも今回の韓国旅行を振り返ってみるのだが、
なぜだろう、やっぱり赤ワインをよく飲んだ日々だった。
もちろん仔牛のローストも微笑む美女もなかったが、
それなりに楽しく、また韓国らしい味わい方をした気がする。
暴走気味に勝手なことを書いてしまったが、
韓国で赤ワインというのは、充分アリではないかと思う。
もちろん赤だけでなく、白もロゼもアリである。
ということで今回は韓国のワイン事情について書いてみたい。
ただし、事前に断りをひとつ。
ワインについて書くが、僕はワインにまったく詳しくない。
僕が知るもっとも複雑なワインの薀蓄は、
「ワイングラスを回すときは時計の反対まわりに」
という程度のレベルである。
これはワイン通の友人が教えてくれたマナーで、
内側に回せば、万一こぼしたときも自分側にこぼれる。
右手でグラスを持つことが前提のマナーだが、
こうすれば他人に迷惑をかけない、と教えてもらった。
そういうよくわかっていない人が書くワイン話なので、
韓国のワイン事情を包括的に語るという訳ではない。
今回見てきた現象だけを、ごく私的に語ろうと思う。
まずは、大学路(テハンノ)で食べた韓定食の話から。
韓定食というのは宮中料理の流れを汲んだコース料理のこと。
今回は韓国でも特に食文化が豊かなことで有名な、
韓国の南西部、全羅道(チョルラド)式の韓定食を食べた。
次から次へと豪華な料理が出てくるのだが、
それに合わせて、赤ワインをグビグビと飲んだ。
もちろん自腹でそんなことをしたら大変だが、
今回の旅行では、ほとんど師匠の日程に帯同していた。
師匠とは年末に出した本の監修を担当してくださった方で、
大変な韓国通であるとともに、広い人脈を持つ。
平たく言えば、一緒にいると美味しいものが食べられる。
この日の韓定食も師匠のご友人がご馳走してくれた。
赤ワインもその方が、わざわざ店に持ち込んだものである。
しかも8人の宴席だというのにたっぷり6本。
夕食ならそれでも話はわかるが、
この日の韓定食は立派な昼食であった。
「余ったら持って帰りなさい」
と師匠にそう言っていたが、
店を出るときは、テーブルに6本の空きビンが転がっていた。
さて、このあたりにひとつ注目したい。
店を出るときに6本の空きビンがゴロゴロ。
これって、韓国の焼酎文化と同じではないだろうか?
韓国の焼酎は2合入りの飲み切りサイズ。
日本のようにボトルキープをする習慣はなく、
頼んだ酒は、その場で飲むのが基本だ。
しかも、韓国人は飲んだビンを片付けず、
あえてテーブルまわりにゴロゴロさせるのを好む。
他のテーブルに対し、
「どうだ、こんなに飲んだんだぞ!」
と虚勢を張る意味合いがあるらしい。
さすがにワインをそうやって飲む人は少ないはずだが、
盛り上がってくると、それもだんだん怪しくなる。
酒席そのものが、韓国スタイルへと変化していくのだ。
例えば、ワインの注ぎ方。
師匠のご友人はワインの勉強をしたことがあるそうで、
飲みながらも、細かいマナーを我々に教えてくれた。
「ワインを注いでもらうときはグラスを持たないように」
さすがにそのくらいは僕も知っていたのだが、
不思議と韓国の酒席では、これがなんとも居心地悪い。
目上の人から酒を注いでもらうときは、
グラスを右手に持ち、左手を軽く添えるのがマナー。
それを留学時代から厳格に学んだおかげで、
ワインにおいても、ついついそれが出てしまうのだ。
何しろ食べているのは韓国料理で、
話している言葉も韓国語である。
そんな韓国文化にどっぷりの状況で、
いきなりグラスだけ置けと言われてもこれは無理だ。
考える前に、右手がグラスをつかんでいる。
しかも、それは韓国文化を学んだ僕らだけでなく、
韓国人にとっても、同じことのようだ。
乾杯と同時に横を向いてワインを飲む。
人のグラスにワインがなくなったら即座に注ぐ。
注ぐときもついつい多めに注いでしまう。
話が盛り上がったら、乾杯をしてみんなで一気。
たぶんこんなワイン文化は韓国にしかない。
師匠のご友人も最初こそ細かくマナーを注意していたが、
だんだんと酔いが回ってくると、
「まあいい、韓国式でいこう」
とグラスを持って受けるのを認めていた。
正式なワインマナーからすると邪道なのだろうが、
少なくとも僕は、そのほうが場に馴染んでいるように思えた。
よっぽど高級なレストランでない限りは、
韓国式に飲むワインというのも、悪くない気がする。
そのほか、留学時代の友人とイタリアンを食べ、
簡単なランチセットに、グラスワインを飲んだのが1回。
お世話になっている料理の先生を訪ね、
夕食をご馳走になって、ワインを飲んだのが1回。
そして残りの2回は、ちょっと不思議なワインバーに行った。
これまた師匠のご友人に招待して頂いたのだが、
ソウルの中でも、昔ながらの町並みが残る地域にある店だった。
バーというよりも、ワインレストランに近いかもしれない。
夜の遅い時間になってから行ったのだが、
真っ暗な住宅街の真ん中で、隠れるように営業している。
細い入口の向こうには、ハングルで「ロマネコンティ」との文字。
最高級の評価を得るワインが、店名となっている。
ちなみにホームページの掲示板で簡単に旅の報告をしたとき、
一部の人が、これを店名でなく飲んだワインだと誤解した。
いくら師匠のご友人がご馳走してくれるとはいえ、
さすがに、そこまでの高級ワインを飲める訳はない。
「ソウルのロマネコンティがよかったなあ」
などとホラを吹くという楽しさもあるだろうが、
そんなことをせずとも、雰囲気がよく魅力的な店だった。
店舗は韓屋(ハノク)と呼ばれる伝統的家屋。
木造の建物に青瓦の屋根、障子張りというスタイルだ。
古きよき韓国の姿を残す店内でありながら、
出てくるのは赤ワインに、チーズの盛り合わせ。
不思議な組み合わせだが、それが妙な味を醸し出している。
店の中庭にはテラス風の座席が設けられており、
ここで飲むと、ソウルの星空を眺めることもできる。
寒い季節だったので、防寒用のシートで覆われていたが、
気候のいい時期に飲んだら、気分もいいことだろう。
自腹で来るにはちょっと高めの店ではあるが、
こんなソウルの楽しみ方も悪くない。
この「ロマネコンティ」で飲んだワインも、
酔いが回っていくにつれて、韓国式に変わっていった。
徐々に変化していく様が、妙に面白かったりもする。
乾杯の声を張り上げ、ぐーっと飲み干してもう1本。
グラスを傾けたところで視線があがり、
ふと、韓屋の屋根が目に飛び込んでくるのもいい。
ワインを飲みながらも、韓国らしさを感じる。
「うん、これは間違いなく韓国の酒文化だ」
そう思ったら、ワインがだいぶ身近に思えた。
細かなマナーや銘柄こそよく知らないが、
「ワインは楽しむもの」
と聞いたことがある。
であれば、韓国で飲むワインもこれでよいのかもしれない。
今回は赤ワインとともに過ごした旅行だった。
にもかかわらず、絶えず韓国らしさを感じる日々だった。
それを喜べるのは、やはり韓国が好きだからだろう。
飲む酒は変わっても人の魅力は変わらない。
赤ワインを飲んでいても、やはりそこは韓国なのだ。
<おまけ>
メルマガに登場したお店データ
店名:ロマネコンティ
住所:ソウル市鍾路区安国洞72-1
電話:02-722-4776
HP:なし
<お知らせ>
赤ワインの写真がホームページで見られます。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/
<お知らせ2>
『魅力探求!韓国料理』が好評発売中です。
たくさんの新聞、雑誌から取材の話を頂いております。
韓国のテレビ局からも取材の依頼が来ました。
メディアへの露出が増え、徐々に本の知名度もあがってきた感じです。
この勢いに乗り、順調に売れてくれればと願う日々です。
アマゾンなどでも好評予約受付中です。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4093103984/
※中身が見たい方は小学館の立ち読みページをどうぞ!
http://tachiyomi.webshogakukan.com/mekuri/4093103984.html
※韓国の中央日報で「魅力探求!韓国料理」が紹介されました!
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=83446&servcode=400
※北海道新聞で「魅力探求!韓国料理」が紹介されました!
http://www5.hokkaido-np.co.jp/books/new/visit.html
<八田氏の独り言>
韓国らしいワインの飲み方があるとすれば、
日本らしい飲み方というのもあるんですかね。
コリアうめーや!!第141号
2007年1月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com