コリアうめーや!!第167号
<ごあいさつ>
2月15日になりました。
韓国では旧正月も終わって日常に復帰。
と同時に衝撃的なニュースもありました。
韓国の国宝第1号、南大門への放火事件。
僕は翌朝、知人からのメールで知りましたが、
その全文が「南大門が全焼!」という短いもの。
寝起きだったこともあって事態をまるで把握できず、
最初はなんだそりゃ? という程度の感想でした。
まず想像したのは、東京・新大久保での火災発生。
「南大門市場」という名前の韓国スーパーがあるんですよね。
次に想像したのが、ソウルにある本物の南大門市場ですが、
ただ、あの広大な敷地が全焼というのも考えにくいです。
きっと新大久保のほうだろうな、と誤解していました。
真実を知ったのは、パソコンを起動してから。
「南大門って門のほうだったのか!」
とより大きな驚きとともに、詳細を知った次第です。
ソウルの象徴だけに、残念な事件でしたね。
さて、今号のメルマガは先月の訪韓報告。
仕事との兼ね合いで、書けないことが多いですが、
久々の韓国で思ったことなどまとめてみます。
コリアうめーや!!第167号。
韓国熱がますますくすぶる、スタートです。
<韓国7泊8日の取材中に思ったこと!!>
1年ぶりに韓国へ行ってきた。
前回足を運んだのが2007年1月。
今回が2008年1月でちょうど丸1年。
1999年に韓国留学へ出かけて以来、
これだけ期間が開いてしまったのは初めてだ。
このメルマガでも、
「なかなか韓国に行けない!」
「これではK・F・C(Korean Food columnist)とはいえない!」
「K・F・C・I・J(in Japan)ではないか!」
と自嘲気味に書き連ねていたが、
内心、本当に自分自身が笑えなかった。
いくら日本で日々、韓国料理を食べているといっても、
定期的に本場へ行かないとやはり感覚が鈍る。
「八田さんて、やっぱりよく韓国に行くんですか?」
と尋ねられ、
「え、いやあ、あはは。まあ、それなりに……」
などと笑ってごまかすのはもうたくさん。
むしろ僕が求めているのはこんなやり取りだ。
「八田さんて、毎日韓国料理食べてるんですか?」
「八田さんて、毎日新大久保にいるんですか?」
「八田さんて、毎日韓国料理のこと考えているんですか?」
という質問に、にまにまと笑いながら、
「いや、まさかそこまでではないですよ」
と答えるお気に入りのシチュエーション。
一見、謙遜しているように見せかけつつ、
大きく否定はしないという自己満足的な鼻高々。
訪韓頻度においても、ぜひそうありたい。
その「八田さんて~」が全面的な賞賛ではなく、
かなりの割合で呆れが混じっているとしても。
僕はもう後に退けない韓国料理バカでよいのだ。
その意味でも今回の訪韓は本当に有意義だった。
取材が主たる目的なので、書けないことも多いが、
せっかくなのでいくつか感じたことをまとめてみたい。
今回の日程は7泊8日でソウル、釜山、済州島。
慌ただしいスケジュールだが、やはり楽しかった。
まずは最初に到着したソウルでの感想から。
今回、1年ぶりに韓国を訪れるということで、
僕自身が何に感動するか期待していた。
日本で食べる韓国料理との明確な違い。
それをどの瞬間に、どんな料理で感じるのか。
そしてその違いとはいかなるものか。
意外にもその感動は到着してすぐに訪れた。
仁川空港から市内へ移動してホテルにチェックイン。
その後出かけた1軒目の取材先でいきなりの感動に出会った。
それもメイン料理ではなく、脇役の副菜。
プチュキムチ(ニラのキムチ)の見事さにやられた。
韓国のニラは葉が細く、柔らかいのが特徴。
ニラ独特の香りはあるが、それが鼻につきすぎない。
鮮烈であるのにもかかわらず、繊細な美味だ。
キムチにするとさらにその味がさらに強調される。
唐辛子を中心とした辛さの味付けが、
ニラ本来の、甘味も引き立ててくれる。
「プチュキムチってこんなにうまかったか……」
と思った瞬間、意識がいっぺんに韓国基軸へと戻った。
ここ最近、日本の韓国料理は急激な進化を遂げ、
本場と変わらない料理を食べられるようになった。
ある部分では、本場を超える味も生まれつつある。
だが、この見事な脇役は日本でまだまだ稀だろう。
韓国料理は野菜を美味しく食べる料理。
本場ならではの、ぶ厚い実力にまず驚かされた。
そんな出会い頭の感動から取材はスタート。
翌日から1日3~4軒の飲食店を巡っていったが、
今回選んだ店は、基本的に行ったことがある店ばかり。
いずれも過去に大きな感動を受けた店ではあるが、
2度目以降ということで、新鮮な体験は少なかった。
むしろ取材を進めていく中で驚きを感じたのは、
意外にも、きちんとした韓国の姿であった。
なにしろすべての取材が驚くほどスムーズ。
取材交渉は現地のコーディネート会社が行ったのだが、
アポイントから何から、すべてきちんと話が通っている。
全行程を通じて、アポを飛ばされたのは1回だけで、
それも話自体は通っており、相手側のうっかりミス。
翌日すぐにリカバリーの取材ができたので、
トータルでみると、ほとんど問題らしい問題がなかった。
これまで韓国での取材はトラブルが付きもの。
スケジュールがぐちゃぐちゃになるのを覚悟していたが、
臨機応変な対応力はまるで必要とならなかった。
取材に出向けば、ああ、はいはいと中に通され、
待っておりましたと店の社長がきちんと出てくる。
「韓国ってこんなにきちんとした国だったか!?」
と、妙な気持ち悪さに包まれてしまった。
たまたまいい店ばかり当たったとも考えられるが、
これでは東京のコリアンタウン取材のほうが大変。
韓国の飲食店は着実に近代化への道を走っている。
また、新しくなっているのはビジネスだけではない。
町そのものが、再開発でどんどんきれいになっている。
飲食店もオシャレできれいな店がビルの中にたくさんだ。
それ自体はもちろん歓迎すべきことなのだが、
少し切ないのは、その再開発に老舗が巻き込まれている点。
50年、60年と続いた飲食店が立地を追われ、
別のところに新しい店舗を構えるケースがかなり増えた。
今回も印象的な出来事がひとつあった。
取材店舗は僕のほうで事前にリストアップしたのだが、
その中のいくつかは、取材依頼の段階で断られた。
もちろんさまざまな事情があることなのだろうが、
その中でどうしてもひとつ、諦められなかった店があった。
乙支路2街に店を構える「平来屋」という冷麺店。
この店はメルマガの第115号でも紹介している。
コリアうめーや!!第115号
http://www.koparis.com/~hatta/koriume/koriume115.htm
牛スープにキジ肉のダシを加えた贅沢な冷麺で、
その味の秘密を、ぜひ1度きちんと話を聞きたかった。
なので、取材の隙間を狙ってアポなし突撃を試みたのだが、
現地に到着してみると……。
なんと店がない。
というか広大な工事現場と化している。
周辺地域も含め、大規模な再開発が行われていたのだった。
「あの名店がなくなってしまったのか!」
と衝撃を受けつつも、
周辺に移転した可能性を考慮し電話を入れてみる。
すると丁寧なことに、休業中のアナウンスが流されていた。
いずれ場所を改めて、営業を再開するとのこと。
閉店ではないことがわかってホッとしたが、
老舗に押し寄せる、再開発の波にまた驚かされた。
新しい店舗はどんな雰囲気になるのだろうか。
古めかしい木のテーブルが並ぶ店内だったが、
新しい店舗にも、そのよさは生かされるのだろうか。
年輪を経た独特の空気は、どこまで残せるのだろうか。
老舗の行方が気になって仕方がない。
といったあたりが、今回感じた印象的な部分。
地方料理の魅力もたっぷり感じてきたが、
それは仕事の範疇に含まれるので、ここでは割愛したい。
詳細は3月中旬発売予定の『るるぶ韓国08~09年版』にて。
ソウル、釜山、済州島の美味しい飲食店を、
それぞれ7~8店舗ずつたっぷりと紹介している。
しかもありがたいことに顔出しのレポート記事。
満面のアホ笑顔とともにお伝えする予定だ。
ただ、やはりメルマガを書くネタも欲しい。
今回でわかったが、それにはプライベートな旅行が必要。
自分の時間を作って足を運ぶ必要を痛感した。
そしてやっぱり地方旅行は楽しい。
再開発の波に揉まれるソウルの姿を見ていると、
どうしても古きよき韓国の姿を、地方に求めたくなる。
3月には食の豊かな全羅道方面を旅する予定。
この調子でどんどん足を運ぼうと思う。
今年こそは「K・F・C・I・J」になるべからず。
取材でその第1歩を順調に刻めたことが、
今回、もっとも大きな収穫だったかもしれない。
<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/
<お知らせ2>
第163号で紹介した地方料理は参加者募集中です。
僕がアテンドを担当し、韓国の地方を巡る2泊3日。
第1回は3月13日から15日までの日程で、
全羅道のうまい郷土料理を中心に探索します。
簡単な日程を紹介するとこんな感じ。
1日目
夜の便でソウルに到着
2日目
朝から全州に移動
全州に到着し全州ビビンバを食べる
観光しつつ法聖浦という港町へ移動
法聖浦で名物のイシモチ韓定食を食べる
全州に戻って宿泊
3日目
朝食に名物のコンナムルクッパプを食べる
観光しつつ、昼ごろ錦山に移動
錦山で名物のサムゲタンを食べる
ソウルまで移動し仁川空港から帰国
2泊3日のツアーなので多少慌しいですが
3地域4種類の郷土料理を堪能します。
国内移動は車なので、交通で悩む必要もなし。
費用や日程など詳細は下記ページを参照。
興味のある方は、ぜひともご参加ください!
モランボンツーリスト
http://www.mrt.co.jp/menu17.htm
<八田氏の独り言>
韓国に行くと韓国に行きたくなる。
矛盾したような本音の話です。
コリアうめーや!!第167号
2008年2月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com