コリアうめーや!!第162号
<ごあいさつ>
12月になりました。
なんとも驚くべきことですが、
すでに今年最後の月を迎えています。
あと30日もしたら今年が終わり。
1年ってこんなに速く過ぎ去るものでしたか?
年々、1年が短くなるとはいいますが、
本当にあっという間に1年が過ぎました。
もうすぐ「よいお年を」の挨拶も交わされる頃。
毎年、誰かに言われて「はっ!」とするのですが、
個人的にこの「はっ!」が、なぜか負けた気になるのです。
誰かに言われる前に、今年こそは自分からと毎年誓うのですが、
いつの間にか忘れて「はっ!」とする羽目に。
今年はもっと積極的にチャンスを狙いたいと思います。
って、何の話をしているんですかね。
さて、今号のメルマガはちょっとした悩みを披露。
みんなで共有して軽くするのが目的という、
読者皆様にはちょっとはた迷惑な内容となっています。
とはいえ、深刻な話ではないのでご安心を。
コリアうめーや!!第162号。
むむむむという顔をしながら、スタートです。
<韓国料理はいったいどこまで韓国料理か!!>
つい先日。
某牛ホルモン鍋店で食事をした。
「ここの牛ホルモン鍋がうまいんですよ!」
「醤油味のタレがよくて、その味付けが実に絶妙!」
「甘さや塩気のバランスがいいんですよねぇ!」
連れて行って頂いた方も全面的に大絶賛。
店の前には雑誌に掲載された記事が貼られており、
それを見ると、東京にあるもつ鍋店のランキング1位。
しかもほぼ満点に近い数字をたたき出していた。
「んー、それは楽しみですねぇ!」
人気店だけあって、待たないと入れなかったが、
美味しいものを期待しながらの待ち時間は嫌ではない。
ちょうど気温がぐっと下がった夜で、
僕らは店の前で震えながら席が空くのを待った。
待ちに待ってようやくありついた牛ホルモン鍋は、
高く評価されるだけあって大変に美味だった。
キャベツ、ニラなどの野菜がどっさり。
その下には脂の乗ったホルモン(小腸)がさらにどっさり。
うまみの濃いセンマイ(2番目の胃袋)や、
追加で入れたギアラ(4番目の胃袋)もよかった。
「いやあ、これは本当に美味しい!」
と、いつもならその感動を詳細に伝えるところだが、
今回のテーマはまたちょっと違った角度からの話。
牛ホルモン鍋をそれぞれ満面の笑みで食べていたところ、
ふとした一言から、うーんと悩み始めることになった。
「八田さん、これって何料理ですかね?」
「それは日本料理でし……あ、あー、そうか!?」
味付けは醤油ベースの和風スープ。
ショウガがきいてさっぱりとしている。
味のベクトルからいえば間違いなく日本料理である。
だが、その彼が言いたいのはこういうこと。
こうしたホルモン系の料理は日韓をまたぐ料理のひとつ。
その発祥と進化については、いろいろと学説が分かれるものの、
戦後、在日コリアンによって発展してきた一面もある。
その一例としてあげられるのが、最近流行のちりとり鍋。
メルマガの第153号でも少し紹介したが、
ちりとりにもよく似た、独特の形状をした鍋である。
正方形に作った鉄板の四辺に高さを持たせたような形で、
関西で生まれ、最近は東京でも徐々に注目を集めている。
この鍋で作られるのがホルモン系の炒め鍋。
食材を炒めるとともに、煮汁も味わえるのが魅力。
味付けはニンニクや唐辛子が入って韓国的だが、
もちろん本場にこの「ちりとり鍋」はない。
しいて言うならコプチャンジョンゴルのアレンジ版。
韓国料理に片足を突っ込んだ料理という感じで、
100%ではないにしろ、韓国料理の範疇には入るのだろう。
だが、それを韓国料理と呼んでよいかは悩むところだ。
そして、そのちりとり鍋が半分ほど韓国料理なのだとしたら、
この日味わった、牛ホルモン鍋はどう考えればよいだろう。
味で判断するなら、ちりとり鍋よりも韓国度ははるかに薄い。
韓国料理に片足まで突っ込んでおらず、
片足の足首あたりまで、あるいは足の甲ぐらいだろうか。
割合的には10%とかそのくらいなのだろうか。
そんなことを考え始めたら、牛ホルモン鍋の美味しさもぶっとんだ。
あれはどうだ、これはどうだと他の料理の検討も始まり、
すっかり韓国料理の境界線を語る会に変わってしまった。
僕もこれまで韓国料理の境界線には悩んできた。
もちろん厳密に線を引く必要などまったくなく、
曖昧なラインで交じり合うのが、食文化の必然である。
厳格に線を引いて、これは韓国料理! と主張したい訳ではなく、
あれこれ悩みつつ、わいわいと楽しみたいのが本音だ。
答えが出ないからこそ楽しいということもある。
せっかくの難問なのでみんなで共有してみたい。
ということで今回のメルマガテーマに選んでみた。
以下は僕がよく悩む料理の数々である。
最後にまとめるのでぜひ一緒に悩んで欲しい。
考えやすいように、いくつかのカテゴリに分けてみた。
1、韓国に定着した外国料理
韓国料理は中国やモンゴルからの影響が大きく、
食文化の中にも、その歴史が刻まれている。
朝鮮時代の宮中で使われた「水剌(スラ)」という単語は、
王様の食事を意味するが、これはモンゴル由来の言葉だとされる。
牛を煮込んだソルロンタンというスープの語源も、
もともとはモンゴル語だったと主張する学者がいる。
だが、そこまで古い話はもう諦めたい。
数百年の歴史があったら外国由来でも韓国料理。
悩ましいのはここ100年くらいの話まででよいだろう。
そしてその筆頭にあげたいのが中華料理と日本料理。
このあたりの料理を「韓国料理」と呼べるかどうか。
おそらく人によって判断は少しずつ変わるだろう。
ということで以下のような料理をピックアップ。
<韓国定着中華料理部門>
・チャジャンミョン(ジャージャー麺)
・チャンポン(激辛味の海鮮麺)
・マンドゥ(餃子)
・タンスユク(酢豚)
・ポックムパプ(チャーハン)
<韓国定着日本料理部門>
・フェ(刺身)
・トンカス(トンカツ)
・キムパプ(海苔巻き)
・ウドン
・オデン
いずれも韓国では一般的な中華料理と日本料理。
そして重要なのは、いずれも韓国アレンジがあること。
中国や日本で食べる料理とはやはり違いがある。
チャジャンミョンやチャンポンは韓国的な要素が強いが、
悩ましいのは中華料理でマンドゥやチャーハンあたり。
日本料理ではトンカス、ウドン、オデンあたりだろうか。
マンドゥは中華料理っぽいがキムチが入ったりもする。
キムチを刻んで入れたキムチマンドゥは限りなく韓国的である。
また韓国のチャーハンにはチャジャンミョンの味噌がかかる。
あのアレンジを見ると、韓国料理だと断言したくなる。
トンカツは西洋由来の料理だが日本で変化。
カツレツなら西洋料理だが、トンカツは日本料理でよいはず。
であるならば、薄い肉を使いドミグラスソースをかけるトンカスは、
韓国料理であると認定するのがスジではないだろうか。
ウドンは明らかに日本料理だが、韓国でも定番の麺料理。
オデンは必ず串に刺して売られているというのが特徴的だが、
日本でも地方によってはそうして売るオデンがある。
せっかくなので西洋料理部門も足しておこう。
<韓国定着西洋料理部門>
・カレライス(カレーライス)
・フライドチキン
・ヤンニョムチキン(味付けフライドチキン)
・ハットグ(アメリカンドッグ)
・トストゥ(トースト)
カレーライスは多少分類が違うのかもしれないが、
日本料理に入れるのもなんなのでこちらでノミネート。
最近は日本のカレールーも普通に使われているが、
古くからの黄色く辛くない「カレライス」で悩みたい。
フライドチキンを韓国料理とは思いにくいが、
甘辛いタレをかけたヤンニョムチキンはかなり韓国的。
またフライドチキンが韓国では夜食、出前の定番で、
専門店も数多いというあたりが微妙に気になる。
屋台料理のハットグとトストゥも意見が分かれるだろう。
2、外国に定着した韓国料理
1の逆バージョン。
ただし、この場合の外国はほとんど日本でよいはず。
他の国で定着し、変化した韓国料理の情報は、
僕もあまりよく知らないので、あれば教えて欲しい。
<日本定着韓国料理部門(焼肉・ホルモン)>
・焼肉全般
・焼肉の牛タン
・焼肉のホルモン全般
・ちりとり鍋
・もつ煮込み
<日本定着韓国料理部門(サイドメニュー)>
・カルビクッパ
・テグタン
・チヂミ
・チョレギサラダ
・盛岡冷麺
まず難問は焼肉を韓国料理とするかどうか。
韓国で食べるスタイルの焼肉は韓国料理で確定なので、
日本式のタレにつけて食べる焼肉に限定する。
韓国では近年までほとんど食べなかった牛タンをどうするか。
そして韓国語由来の単語も多いホルモン類をどうするか。
先に紹介した、ちりとり鍋を韓国料理に含むのか。
ホルモンというくくりで考えるなら、
日本の居酒屋で定番の、もつ煮込みはどうか。
そして焼肉店のサイドメニューも悩ましい。
カルビクッパは明らかに韓国料理が原型なのだが、
韓国に行くと、そういう名称の料理は見当たらない。
牛カルビを煮込んだカルビタンというスープはあるが、
日本で見るカルビクッパのように具だくさんではない。
焼いた牛カルビを乗せるカルビクッパなどもあることから、
韓国料理の原型とは遠い、と判断する向きもある。
同様にテグタンという料理も韓国では見かけない。
日本ではテグタンというと辛い牛スープを意味するが、
韓国ではマダラ(真鱈)のスープを意味し、まったくの別料理。
辛い牛スープのテグタンは、また別の名前で呼ばれている。
チヂミやチョレギサラダも韓国方言に由来するもの。
韓国料理の範疇に入るだろうが、日本への流入過程を考えると、
微妙に本国の料理とズレが出ているのが気になる。
盛岡冷麺も発祥はともかくすでに郷土料理の顔。
盛岡と書かれたものを、韓国料理とは言いにくい。
そして、もうひとつ。
創作系の韓国料理でも悩みたい。
この話題についてはメルマガ第157号でも少し触れた。
いまの日本では韓国料理がどんどん新しくなっている。
創作系の韓国料理は、斬新さと新しさに包まれているが、
場合によっては、それを邪道と見る人もいる。
アレンジ系の韓国料理は今後さらに増えていくはず。
それを韓国料理と呼べるのかは、かなり難度の高い問題だ。
いくつか例をあげてみるので、その中で悩みたい。
<創作系韓国料理>
・日本の野菜を使ったキムチやナムル
・日本の銘柄豚を使った豚焼肉
・唐辛子を入れないチゲ
・下味をつけないで焼くプルコギ
・フレンチの技法で作ったパジョン
キムチやナムルは韓国の食卓に欠かせない副菜。
それを日本野菜を使って作ったものをどう捉えるか。
具体例としては小松菜のキムチや、ゴーヤのナムルなど。
それは韓国にあるの? という野菜全般の話として。
銘柄豚を使った豚焼肉は日本の流行韓国料理。
技法としては韓国料理だが、日本の豚でないと成り立たない。
そう限定した場合に、韓国料理と呼んでもよいのか。
特に豚を焼くだけというシンプルな調理法が悩みどころ。
韓国料理と主張できるのは、サンチュなどの葉野菜で包む点だが、
だが、最先端の流行では、塩だけでという味わい方もある。
その楽しみ方を求めた場合は、韓国料理と呼んでよいのか。
韓国料理には唐辛子を使った辛い料理が多いが、
辛いものが苦手な人にも食べて欲しいとの動きがある。
唐辛子を入れず、別の味付けで作ったチゲはその代表格。
塩ダレで真っ白に作ったスンドゥブチゲはどう判断するか。
プルコギは第157号にも書いた話そのもの。
プルコギの特徴として牛肉に下味をつけることがあげられる。
その下味の手順を省略したらどうなるか。
いい牛肉なので、牛肉本来の味を楽しんで欲しい。
プルコギの味は一緒に味わう野菜のほうに限定してつけ、
牛肉はそのまま焼いて、野菜と一緒に味わう。
食べたときの味わいは最終的にプルコギそのもの。
だが、その過程がまったく違うとなるとどうなるか。
フレンチの技法で作ったパジョンも似たような例。
パジョンの生地、具の海産物を別々に焼き、
一緒の皿に持って、その脇にふんわりオムレツを添える。
それをすべて一緒に食べると口の中でパジョンになる。
これら一連の創作系韓国料理は、
この夏の取材でもっとも大きな感動と収穫だった。
僕は韓国料理の新たな未来を切り開く料理と考えているが、
他の人から見ると、どうなのだろうとまだ少し不安でもある。
その意味も込めて、多くの人に判断して欲しい。
ということで以上、ノミネート料理30種。
これをどの程度まで韓国料理と呼べるのか。
ぜひ一緒に悩んでみて欲しい。
ある程度、反響が大きかったら再度まとめる予定。
今回はその準備段階と考えて、ぜひ気楽に悩んで欲しい。
一緒に悩んでくれる人は、下記の書式でメールをください。
メールアドレスはいちばん下に記載。
============================
[ ]内に以下の記号を書き入れてください。
間違いなく韓国料理 → ◎
韓国料理に含んでもよい → ○
韓国料理の要素を多少含む → △
韓国料理とはいえない → ×
<韓国定着中華料理部門>
・[ ]チャジャンミョン(ジャージャー麺)
・[ ]チャンポン(激辛味の海鮮麺)
・[ ]マンドゥ(餃子)
・[ ]タンスユク(酢豚)
・[ ]ポックムパプ(チャーハン)
<韓国定着日本料理部門>
・[ ]フェ(刺身)
・[ ]トンカス(トンカツ)
・[ ]キムパプ(海苔巻き)
・[ ]ウドン
・[ ]オデン
<韓国定着西洋料理部門>
・[ ]カレライス(カレーライス)
・[ ]フライドチキン
・[ ]ヤンニョムチキン(味付けフライドチキン)
・[ ]ハットグ(アメリカンドッグ)
・[ ]トストゥ(トースト)
<日本定着韓国料理部門(焼肉・ホルモン)>
・[ ]焼肉全般
・[ ]焼肉の牛タン
・[ ]焼肉のホルモン全般
・[ ]ちりとり鍋
・[ ]もつ煮込み
<日本定着韓国料理部門(サイドメニュー)>
・[ ]カルビクッパ
・[ ]テグタン
・[ ]チヂミ
・[ ]チョレギサラダ
・[ ]盛岡冷麺
<創作系韓国料理>
・[ ]日本の野菜を使ったキムチやナムル
・[ ]日本の銘柄豚を使った豚焼肉
・[ ]唐辛子を入れないチゲ
・[ ]下味をつけないで焼くプルコギ
・[ ]フレンチの技法で作ったパジョン
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この料理も一緒に悩んだらよいのでは、
というアドバイスも一緒に頂ければ幸いです。
<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/
<お知らせ2>
東京の韓国料理店ガイドが発売されました。
本当にいい店だけを厳選し180店舗を紹介。
新大久保、赤坂、銀座、麻布、六本木、上野などなど。
本場をもしのぐ名店揃いの1冊です。
タイトルは『東京 本気の韓国料理店』(実業之日本社)。
定価1200円(税込)で全国書店にて取り扱い。
飲食店だけでなく食材店、韓流グッズ店も含まれているので、
すべての韓国ファンみなさまにオススメです。
アマゾンなどのネット書店でも購入できます。
アマゾン
http://www.amazon.co.jp/dp/4408029793/
楽天
http://item.rakuten.co.jp/book/5129966/
僕にとっては長年の夢がついにかなった気分です。
魂のこもった1冊をぜひご購入ください!
<八田氏の独り言>
久しぶりに読者アンケートを求める企画。
返信が少ないと悲しいので、ぜひみなさんご協力を!
コリアうめーや!!第162号
2007年12月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com