コリアうめーや!!第90号
<ごあいさつ>
12月になりました。
いよいよ師走。今年も最後の月です。
1年が過ぎ行くのは本当に速いですね。
ついこないだ正月を迎えた気もしますが、
2004年もそろそろ締めくくりです。
年末に向けて、忙しい日々が続くと思いますが、
皆様、くれぐれも健康にはご注意ください。
特に忘年会の連続による飲みすぎには気をつけて……。
って、それは自分自身への戒めですね。
さて、今号のコリアうめーや!!ですが、
ちょっと気分を変えて、嫌いな料理について語ってみました。
タイトルはコリア「うめーや!!」でも、
内容は180度逆を行く話。
僕にとっては弱点とも言える料理の紹介です。
コリアうめーや!!第90号。
半分涙目になりながら、スタートです。
<ポンデギが嫌いだ!!>
『ドラゴンクエスト8』が発売された。
やりたい。でも、忙しいからできない。
知らない人のために、簡単な説明をすると、
『ドラゴンクエスト8』は人気テレビゲームのことである。
11月27日に発売され、3日間で300万本が売れたらしい。
やり始めるとハマってしまうのは目に見えているので、
欲望をぐっと抑えて発売日には買いにいかなかった。
正月休みを待って購入しようかと考えている。
でも、やっぱりソワソワするんだよね。
実際にゲームができないとしても、
せめてドラクエ気分にくらいは浸りたい。
韓国料理の話なんかやめて、ドラクエの話を書いてしまおうか。
いや、でもそれだと読者の方々が怒るに違いない。
購読をやめてしまう人も出てくるだろう。
では、韓国料理の話とドラクエの話を融合してみたらどうか。
ドラクエ風に韓国料理を語ってみるという企画。
例えば僕が主人公になり、敵のボスキャラは……。
「やっぱりポンデギだろうな……」
はい、すいません。
ポンデギの話がしたいばかりに、
無理やりドラクエの話を持ってきました。
目一杯強引な前フリをご容赦ください。
ポンデギ。
それは韓国料理における納豆的存在の食べ物。
日本に来る外国人の多くが納豆を嫌うように、
韓国を訪れる外国人はポンデギに恐怖する。
数ある韓国料理の中でも突出したキラワレモノであり、
外国人が嫌う料理ナンバーワンの座を不動のものとしている。
では、そのポンデギとは何か?
平たく言えば「虫」である。
もっと詳しく言うなら、蚕のさなぎを蒸し煮にしたもの。
醤油で味付けられたものが、屋台などで売られており、
韓国ではごく一般的に食べられている。
栄養価が高く、また安価でもあるため、
子供のおやつとして昔から人気があった。
そのままムシャムシャと食べるほか、
スープの具にしたり、野菜炒めに入ったり。
その用途は、想像するよりはるかに幅広い。
僕はこのポンデギが大の苦手である。
韓国料理を愛し、その普及に努める者としては恥ずかしい話だが、
どうしてもこのポンデギだけは好きになれない。
その理由は独特の匂い、味などいろいろあるが、
それ以前に「虫」であるという先入観も大きい気がする。
なにしろ見た目はほとんど茶色いダンゴ虫状態。
イナゴやザザムシなどと日常的に接していれば違うのだろうが、
僕はこれまで虫をほとんど食べてこなかった。
すごく小さい頃にイナゴの佃煮を少々。
あとはまったく記憶にない。
このポンデギを敵のボスキャラとして定め、
主人公である僕が冒険、活躍するストーリー。
これならコリアうめーや!!としても充分通用する。
例えばこんな感じではどうだろう。
ポンデギがあらわれた。
▼
コマンド?
たたかう
▼
八田氏の攻撃
ポンデギに3のダメージを与えた。
ポンデギの攻撃
ポンデギは怪しい臭いをふりまいた。
▼
八田氏は目の前がクラクラしてきた。
駄目だ。これでは単純にゲームをなぞったにすぎない。
ゲーム好きならよいが、そうでない人は困惑するだけだろう。
それにポンデギと戦わなければならない理由も希薄だ。
そもそもポンデギが攻撃してくること事態が不自然である。
むしろ今までの経験上、ポンデギ「で」攻撃された事のほうが多い。
例えばこんな感じである。
友人Aがあらわれた。
▼
コマンド?
逃げる
▼
八田氏は逃げ出した。
しかし友人Aにまわりこまれてしまった
友人Aの攻撃
友人Aはポンデギを八田氏の口に放り込んだ。
▼
痛恨の一撃!
八田氏は285のダメージを受けた。
八田氏は死にました。
ああああああああ、思い出すだけで震えが来る。
僕はこれまで5粒(匹)のポンデギを食べた。
いや、友人によって食べさせられた。
そのどれもが悪夢のように消えない記憶として残り、
ときにフラッシュバックとして僕に襲いかかってくる。
忘れたくても忘れられない、忌まわしい思い出である。
まず歯触り。
カシッカシッカシッ。
言うなればセミの抜け殻を踏んづけたような感じ。
頭の中に虫がつぶれていく姿が想像される。
次に味。
むわっとした独特の匂いが口中に広がる。
高野豆腐からダシ汁が染み出てくるような感じ。
独特の嫌な香ばしさが、煮汁の塩気とともに広がっていく。
この時点でもう気絶寸前。
ポンデギの味と匂いには、どうしても慣れることができない。
実はポンデギ以外にも、苦手な韓国料理というのがいくつかある。
まがりなりにもフードコラムニストを名乗っている以上、
嫌いですませていてはいけないのだが、こればかりはどうしようもない。
ただ、それらもポンデギほど苦手ではなく、
ちょっと我慢をすればそれなりに食べることはできる。
せっかくなので、韓国のちょっと抵抗のある食べ物を紹介してみよう。
まずポンデギと同じくらい熱心に語られるのがケブル。
日本語ではユムシと呼ばれる、ナマコのような海の生き物だ。
ただし見た目はナマコというよりも、むしろミミズっぽい。
ケブルを指して「海ミミズ」という人もいるくらいだ。
このケブルを生のままぶつ切りにして刺身で食べる。
見た目はグロテスクだが、口に入れてしまえば意外に食べやすい。
ほんのりと甘く、コリコリとした歯触りが珍味だ。
このケブルも長い間ずっと避けていたが、
あるときどうしても食べなければいけない状況に追い込まれた。
それで仕方なく口にしたのだが、
「食べて食べられないこともないな」
という感想であった。
見た目は強烈だが、味そのものはたいしたことなかった。
逆に、見た目は普通だが、
食べてみて強烈だったというのがホンオである。
ホンオは日本語でエイ。
エイを刺身にして食べるのだが、
これは味というよりも、匂いが強烈。
エイは発酵によってとんでもないアンモニア臭を発するのだ。
これを食べさせられたときは、
鼻にかぎ針を突っ込まれたかと思ったくらいの衝撃だった。
鼻がもげそうになるほどの猛烈な臭気。
ただし匂いさえ克服すれば味そのものは悪くない。
キムチ、豚肉と相性がよく、一緒に食べるとなかなかおいしい。
ポンデギ、ケブル、ホンオ。
これらを韓国の嫌われ料理ベスト3と認定したい。
もちろん外国人にとっての嫌われ料理であって、
地元では普通に好んで食べられているのは言うまでもない。
また、これらが大好きだという人がいたら、それは素直に謝ろうと思う。
嫌う人が多いというだけで、みんながみんな嫌いだという訳でもない。
しかし、ポンデギは他の2つに比べてもやっぱりすごい。
こうしてまとめて評価して始めてわかったが、
僕にとってポンデギはすべてがダメなのだ。
【ポンデギ】
・見た目……×(虫そのもの)
・匂い………×(鼻にむわっとくる感じ)
・味…………×(嫌な香ばしさ)
【ケブル】
・見た目……×(巨大なみみず風)
・匂い………○(特になし)
・味…………△(ほんのり甘い)
【ホンオ】
・見た目……○(魚の刺身風)
・匂い………×(強烈なアンモニア臭)
・味…………△(臭気の奥に酸味)
唯一、魅力的に感じられる部分があるとすれば、
その存在感ゆえに、話のネタに抜群というくらいだろうか。
ポンデギひとつでぎゃあぎゃあ騒ぐ。
これはなかなかに楽しい。
というわけで、今回のメルマガでは、
ぎゃあぎゃあ騒ぐほうに焦点をあてて書いてみた。
ただ、いつかは味の魅力についても書きたい。
嫌いな食べ物は何かの拍子にいきなり食べられるようになる。
いつの日かポンデギをテーマに、
「コリアうめーや!!」
と叫べる日が、もしかしたら来るかもしれない。
来る日に備えて、少しずつでもポンデギを食べてみるか……。
と、考えた瞬間、背筋がぞぞぞぞぞっとなった。
やっぱりポンデギは身体が拒否している。
僕がポンデギのうまさを語る日。
その日は、きっと宇宙の果てよりも遠い。
<お知らせ>
ポンデギの写真がホームページで見られます。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/
<お知らせ2>
『3日で終わる文字ドリル 目からウロコのハングル練習帳』が発売になりました。あちこちの書店に並び始めています。アマゾンのランキングでは最高で991位を確認。順調に売れているようで、嬉しい限りです。ホームページでは表紙紹介、簡単な内容紹介のページを設けています。
書籍刊行情報
http://www.koparis.com/~hatta/news/news_000.htm
表紙紹介ページ
http://www.koparis.com/~hatta/news/news_008.htm
内容紹介ページ
http://www.koparis.com/~hatta/news/news_009.htm
<八田氏の独り言>
本当は最後までドラクエ的にポンデギを語りたかったのですが、
途中で失敗が見えたので方向転換をしました。残念。
コリアうめーや!!第90号
2004年12月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com