コリアうめーや!!第43号
<ごあいさつ>
12月15日です。
いよいよ今年最後のコリアうめーや!!となりました。
2002年も残りあとわずか。
1年って本当にあっという間ですよね。
それも12月に入ると1日1日がもっと速い。
忘年会だ、クリスマスだと大騒ぎしているうちに、
なんとなく紅白歌合戦を見ながらソバをすすっています。
除夜の鐘を聞きながら、今年も色々なことがあったなあ、
なんてぼんやり考えていると、
今度は目の前にお雑煮、おせちが並んでいて、
豆まいて、花見して、海に行って、紅葉を眺めて、
ふと気付くとまたソバをすすっているんです。
2003年はどんな1年になるのかなあ……。
来年のことはひとまずおいておくとして、
2002年の最終号。
キムチ作りにチャレンジしてみました。
コリアうめーや!!第43号。
初体験にトキメキながらのスタートです。
<キムジャンやってみようじゃん!!>
韓国料理のメルマガを書いているなどというと、
「へえー、じゃあキムチなんか漬けたりするんですか?」
という反応が返ってくる。
それもけっこう頻繁に返ってくる。
あるいはもっとストレートに
「わあー、キムチの漬け方教えてください!」
なんて言われたりもする。
これは八田氏にとって胃がキリキリするくらいのプレッシャーだ。
正直に言おう。はっきり言おう。包み隠さず言おう。
食い方は知っていても、漬け方は知らん!
「あ、おほん。漬けたての白菜キムチは実に瑞々しくてだね、酸味がなくて甘味を強く感
じるんだよね。シャキシャキした歯触りが最高だよ。最高。茹で豚や生牡蠣と合わせても
うまいねえ。はっはっは。え、キムチの漬け方? それはあれだよ、キミ。えーと、本で
も買って読んだらいいんじゃないかな。おほんおほん。」
ああっ、我ながら情けない姿だ。
韓国料理といえばキムチ。キムチといえば韓国料理。
なのに自分はそのキムチの漬け方すら知らない。
こんなことでいいのだろうか。嗚呼。
というような創作的葛藤の末、キムチを漬けてみることにした。
おりしも11月末から12月にかけてのシーズンは、
越冬用のキムチを大量に漬けるキムジャンという作業が行われる時期。
韓国のあちこちの家庭で目を疑うような量のキムチが漬けられる。
12月某日。
冷たい雨が降りしきる中、厳かに初めてのキムジャンがスタートした。
参加者は八田氏を入れて全部で5名。
チャレンジしたのはもちろん白菜キムチである。
当初メルマガ上では「八田氏と助手4名」という表記にしようと思っていたが、
「参加者4名でお前が助手じゃ!!」
という参加者による強いブーイングがあったため変更になった。
どんなコミュニティにあっても、八田氏の席は一番目立つ末席である。
なぜなのだろう。嗚呼。
狂おしいまでの悩みはとりあえず置いといて、
白菜キムチを漬ける過程を簡単に説明する。
1、白菜を塩漬けにする
2、白菜を水洗いする
3、キムチの具を作る
4、白菜と具を混ぜる
5、じっと発酵を待つ
うーん。どうも簡単すぎたかもしれない。
まあ、おいおい詳しく説明するとしよう。
白菜の塩漬け作業は下準備として2日前の深夜にすませておいた。
よく洗い4等分した白菜を8~10%の塩水に丸1日漬けておく。
当日はその白菜をよく水洗いして塩分を落とし、そこからスタートである。
今回使用した白菜は5個。つまり参加者1人に1個ずつ。
韓国の友人に話をしたら「それっぽっちでキムジャンと言うな」と怒られた。
韓国では20だの50だの、あるいはもっと多い数字でキムチが漬けられていく。
初めてのキムジャンということで量の少なさは勘弁して欲しい。
では、作業開始。
まず重要な作業として「切る」と「つぶす」がある。
「じゃあ、八田くん。『切る』を担当してくれ。」
「なに切ればいいんですか?」
「全部だよ。全部。助手なんだから。」
「…………。」
八田氏の目の前に大根2本、スルメイカ2杯、長ネギ2本、
ニラ2束、セリ2束、タマネギ1個、ナシ2個がどーんと積まれた。
「はい包丁。はいまな板。大根はすべて千切り。普通よりも細く切ってね。スルメイカは
いかそうめんのもっと細いような感じで。長ネギは薄いナナメ切り。ニラとセリは3セン
チくらいにザク切りして、タマネギはみじん切りね。ナシは皮むいてすりおろしてちょう
だい。わかった?」
「はーい……。」
ひとり黙々と作業に取り掛かる八田氏。
見れば「参加者」の方々は和気あいあいとショウガ、ニンニクをすりつぶしている。
ショウガ、ニンニクはミキサーで、がーっとやってもいいのだが、
それだと繊維をすりつぶして味がよくないとのことで、すり鉢で丹念につぶす。
「切る」と「つぶす」だけで延々2時間以上かかった。
たった5個の白菜だけでこれだけ大変なのだから、
韓国で行われているキムジャンはもっと大変なのだろう。
近所の人が総出であちこち手伝いながらキムチを漬ける理由がここにある。
今日はあっちの家でキムジャンのお手伝い。
明日はそっちの家でキムジャンのお手伝い。
明後日はみんなが家にきてキムジャンのお手伝い。
こうして一冬分のキムチが各家庭で出来あがる。
よく出来たシステムである。
「切る」と「つぶす」が終わったら、次は「混ぜる」である。
大きなたらいに千切り大根を入れ、粉唐辛子をどどっと入れる。
白かった大根はあっという間に真っ赤になり、
「なんか、これだけでうまそうだな」
という状態になる。
もちろんこれだけではなんの味もついてないので、
丁寧に全体を混ぜながら色々な材料を足していく。
アミの塩辛、イワシの魚醤、スルメイカ、ニラ、ネギ、
セリ、タマネギ、ニンニク、ショウガ、ナシ。
この他にも地方によって、家庭によって入る材料は異なる。
生牡蠣が入ったり、芥子菜が入ったり、もち米の粉を溶いたものが入ったりする。
家庭ごとに伝わる秘伝、秘法、秘密、秘訣などがある。
もしかしたら秘技、秘薬、秘話、秘宝館などもあるかもしれない。
さて、全部の材料が混ざったら、いよいよ白菜にすりこむ作業である。
白菜の葉1枚1枚の間に、
おいしくなあれ、おいしくなあれ、とすりこんでいく。
韓国では作る人の手の味こそが、最終的なキムチの味を決めるといわれる。
家で食べるキムチは、お母さんの手の味がするからおいしいのだそうだ。
愛情を込めて、真心を込めて、食べる人のことを思いながらすりこんでいく。
非常に重要な作業なのである。
よって助手の八田氏はこの作業に入れてもらえなかった。
キムチの具が全体によくすりこまれたら丸くまとめる。
これを約3週間保存し、ほどよく発酵したら白菜キムチの出来あがりである。
初めてのキムジャンで漬けたキムチは家のベランダで静かに熟成している。
順調にいけば年の瀬頃には食べられるだろう。
年末年始と充分に楽しめそうだ。
あ、そうそう。
出来あがったばかりのキムチをみんなで味見してみた。
漬けたての瑞々しいキムチを食べられるのは作った人の特権。
お疲れさまを兼ねて漬けたてキムチの宴を開いた。
そのとき一緒に食べたポッサムという料理がまた絶品。
でも、その話はまた次回ね。
<お知らせ>
キムジャンの写真がホームページでみれます。
よかったらのぞいてみて下さい。
http://www.koparis.com/~hatta/
<お知らせ2>
プサンナビで慶州探訪記を書きました。
慶州にある観光地を4日間かけて踏破した記録です。
http://www.pusannavi.com/area/area_r_list.html?bid=KFC2&area=7
同じく済州島日記もそろそろ完結。
今週末あたりに最終話がアップされる予定です。
http://www.pusannavi.com/communi/c_r_t_list.html
<八田氏の独り言>
キムチを漬ける大変さがよくわかりました。
万一、韓国の女性と結婚するようなことがあっても、
手作りキムチが食べたいとは口が裂けても言えません。
コリアうめーや!!第43号
2002年12月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com